みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

want out

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 けっきょく放りだしてしまった、
 借りてきた本のすべてを
 おれという痴聖のなかにあった知性はすべて、
 赦されず、癒やされず、どっかへいってしまって、
 パークサイド・モーテルのいかがわしいマネキンたちと一緒になって、
 灯りのなかに突っ立ってるかも知れない、けれでも、
 おれは買った坐椅子もほっといて、
 蒲団で眠ってしまう
 わるい眠り
 わるい夢たち
 颱風が去って、空気がしんみりしてきた
 冷たいかぜのなかで炭酸水を買いにいくとき
 おれはずっと過古と現実のはざまでゆれ、
 ゆれながら、きのうの会話を懐いだす

 ジョンソン・フレドリックという男がおれに託けた
 あなたに会えるかと、
 あるいはわたしが日本語を完璧に理解することをあなたは望むかと
 おれは答えた、
 you can see me, if you visit.と
 それからこうもいった、 
 I'm still only can simple English.
 So I'm glad if you understand simple Japanese. と。
 ほんとうはたやすい英語さえ、おれにはわからないというのに
 かれはなぜおれと対話しようとしてるのか、まるでわからない
 詐欺の類いか、はたまたおれを女とでもおもってるのか
 禿げあがった中年男が画像のなかで微笑む

 緑色の男が死んだ
 夏の光りのなかで死んだ
 秋は透きとおって、なにもかもがわからなくなる
 こういうとき、シオランならどうおもう?
 いいや、かれは詩なんかきらいなはずだ
 男は放射状にちらばり、やがて枯れ色となり、
 腐敗して土に混ざる
 こればっかりは仕方がない
 おれはjet johnsonを聴く
 すでに解散した、
 ノルウェーのバンド、
 「death song」のシングル盤を
 長くつづくためらいが本のページを重くする、
 そしてまたおれはなにかを放りだすことばかり考えてる。

 


jet johnson / death song