みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

きみたちは、あどけない顔で、

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 今月は、あと¥23,000しかない。というのも見栄を張って歌集を50部も刷ってしまったからだ。短歌なんざ、売れるわけがない。しかも価格設定は¥2500と来る。いまの世にそんな酔狂なものに銭をやれる人間などいない。けっきょく歌集のほとんどは歌誌にむりくり寄贈するしかなくなってしまった。噫。
 電子書籍版も当然値段を下げた。いままでに出した詩集と一緒に千円未満に追いやった。けっきょくできるのはそれだけのことでしかない。おれはしばらくオートミールと、食パンと蜆汁で生活しなくちゃならない。そして眠ってるほか、やれそうなことはないみたいだ。あれ?──いままでの希望はどこにいってしまったんだ?──おれはこんなところでなにをやってる?──情けないことに公共料金もネット代も払えない。すべては来月だ。噫。

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 知人が映画「ジョーカー」を薦める。かれ曰く《完璧に無敵の人の内容でした。こういう社会問題は世界共通と思いつつ、それを優れた活劇映画として仕上げてくるアメリカは流石でした》。どうにも、その"無敵の人"という表現が気に喰わない。けっきょくそれはユーモアを解さず、自己分析ができず、自己変革に敗北し、やけっぱちに暴走したものへの蔑みじゃないのか。そしてそんなこととはおかまいなしに変革を免れつづける社会=われわれが優位だとする宣言ではないのかとおもう。もちろん、こんな戯れごとは思考実験の域をでてない。どこぞの批評では主人公の暴走を肯定的に捉えてるとして批判されてた。
 まあ、そんなことはおいといて、まずは映画を観なきゃ話にはならない。出発点に立てない。でも、金がない。子供のころよろしく、ラム・レーズンのアイスでも嘗めていたい気分だった。もちろん、ラムはアルコールだ。おれはシアナマイドを服用してる。この事実を服膺せねばいかん。噫。

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 けっきょくおれは文藝も音楽もやめて絵にもどることになるだろう。売れるものをつくらなきゃならない。なんとか都合をつけてデッサン教室にでも通い、基礎を学ぶしかない。そいつで巧くいったなら、余技に曲でもつくればいい。もちろん音楽なんかモノにならない。詩歌はしばらく手慰みでいい。小説はあきらめてしまった。そんな余裕はない。とにかく、かわいい少女でも書けばいいいいんだろ? 藝術ぶった代物じゃウケないのはわかってる。とにかく理想のエロスを描くしかない。噫。

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 きょうもいつもとおなじ。朝餉に鶏胸肉と野菜の蒸し焼き、昼餉にグリルチキンとパンと野菜ジュース、そして夕餉にオートミールカップ・スープ混ぜ合わせ。けれど、これだってあんまり安くはない。けっきょくは食パンと蜆汁で我慢ということになるだろう。
 おれは眠る、おれは眠る、おれは眠れる。──というわけで、いつか書きかけたままの「ナルシス」という詩の断片を反芻しながら、敷きっぱなしの蒲団のなかに潜り込み、夢を見るとしよう。だからきみたちは、あどけない顔で、一笑に付してくれ。噫。

  他者たちから定義づけされたおれという存在についてのノート
  自身の理想と現実についてのノート
  その乖離についてのノート
  その容貌についてのノート
  黴の生えたノート
  ¥380のノート
  灰色のノート

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