みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

帰途

 

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 三沢では雨すらも言語になる 帰途を失ったひとがレンタルビデオの駐車場に立つ 傘がない秋口にはからっぽのボトルがよく似合う したたかに酔い、そして瞑目するあいだ、すべての鳥が、カチガラスになったような錯覚をした それは10月の暑い夜 冷房装置の悪夢が膨張するアパートの室で、やがて人参が目醒め、鶏肉が暴れだすだろう 夜という夜の、寄る辺のない旅とともに 

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 天使が墜落する週末 演技論がわからないという理由で、飼い犬を撲殺した男がいま、便秘を耐えている 蟋蟀の眼のなかでフレームアウトする通行人がひとり、またひとりと失踪する エキストラがいないのだ 制作進行は悩み、そしてジン・ライムを呷る 殺し屋のいない世界で、いまなお活劇が求められるのはみながみな人生に愛想が尽きたせいだと、児童合唱団が輪唱するのをおれは待っている

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 洗浄豚のスライスを買って、帰途に就く 憑かれたおれは水を呑む男 だからといって無傷で済まされるわけじゃない 汚れた両手で氷を貪って、主旋律をブリッジ・ミュートする 叶えられない祈りとともに戦後を嘲笑する 空腹だ 全裸のまま、うろつき、吼え、そして大麻を幻想しながら、夜明けの街を抱きしめる 緑色だ なにもかも、

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