みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

ボストンでは禁止


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 おれはたったいま、ビル風に吹かれた一枚のスリップを眺めている ここは小さなアパートメントの最上階 地上ではひとりの男が戦闘機めがけてジャンプしている 声はここにない 中枢都市の神経を逆なでするような陽物が痙攣のなかでひどく気持ちいい 石油が漏れだしたタンクのまわりを蟻が騒がしい なるべく足音を消して、おれはむかいの窓に癒着した 坂を登っていく女の子たちがボストンでは禁止される どうしたものか、翅のない虹がかの女たちを突き破って、いまさらにすべてを虚しい色に変えてしまう

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 ホイットマンを猫が朗読している夜 夜の魂しいが熱い 中二階の室で、孤立したおれが泣いている おれのなかの子供が泣いている 母性はまやかしだ 父性は暴力でしかない 文学は誘拐され、賭博が生き残る かつてあったはずのものを求めて、金魚が歩く 星が瞑目する それがたったひとつの映像 おれの手に残されたプログラムにたったひとつ残されたタイトル 指輪やリボルバー、着せ替え人形と集団志向に陥りながら、蛙のふりをして線路工夫の一団とパーティをボイコットしてしまう

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 心臓が発芽した場所をずっと探している モーテル暮らしの鰥夫のおれにできることはそれだけ 部分的にエナメルを使用したボディで、新型車輛が走ってゆく ビッグ・タイムに乗り遅れた一頭のラバが愛する家族を有蓋貨物に閉じ込める ミュートのラッパと、電気椅子の伴奏で池田大作の誕生を祝うカルト野郎が、その頭ごと、セイウチに飛び込む そしてコラールをとともにやつは花壇に移植されてしまう

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