みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

花ざかる野(2018)

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   *

 

 草の枕の、
 初霜の光るを
 なにとぞお納めくださるよう
 再度申し上げる
 あなたのおまざしのなか
 わたしめの、
 ふとどきな熾きなぞ、
 忘れ給ましめ、
 かりそめの、
 歌。


   *


 おれはおまえのまなざしを避けて遠ざかる、桜桃
 たしかにさっきまで足を鳴らし
 愉しんでいたのに
 もはや、
 稲妻
 だれかが
 おれを捕まえようと折ってくる
 祈る場所を探してるんだ
 来い!
 渓谷のふかい、
 ハイウェイを走り、
 やがてここにたどり着くまで
 おれはかつてきみを探してた
 求めてた
 そして利用すらしてた
 でもそれも終わって、
 鰯、──その切り落とされた頭をなでてる
 おやおや、もうこんなに腐れてしまって
 憐憫なんかくその役にも立たないのに
 きみのことが欲しかった
 露草の色や、
 ゆれる天体や、
 紡錘工場のかげ、
 みたいに
 去る冬の夜
 はじめておれが撲った男は
 鼻骨を折られ、
 上顎に皹を入れられた
 かわいそうに
 かれはパチンコホールを愛してた
 もうじき執行猶予が終わる
 花ざかる、
 野の、
  
   *

 

 水の枕の、
 初夏の光りを
 なにとぞお納めくださるよう
 再度申し上げる
 あなたのおまざしのなか
 わたしめの、
 ふとどきな熾きなぞ、
 忘れ給ましめ、
 かりそめの、
 辞。

 

   *