夏のあいだじゅうずっとおれは父の命令で草を刈ってた
前庭、裏庭、通路、そして隣の空き地、まえの空き地を
あらゆるものごとは、あまりにもたやすくおれを突き落とす
汗だくになって、へたり込んでるおれに父が罵声を浴びせ、腕をふりあげる
毎年、ずっとつづくこの光景の終わりにはいったいなにがあるのか
溝に溜まった草を拾い、籠に入れて、焼却炉に入れた
あの夏のすべて、そして惨めらしさ、そして恐怖
いつ終わるとも知れない仕事
じぶんの望まないところで起きる、
さまざまな摩擦、
そして終末が約束されないところで、
みずからの熾きを知るせつなさ
老衰を待つ植物たち、
自然の自己批評のなかで、
立ちながら滅ぶ木々のあいまで
おれはじぶんの抱える問題とか、
不定形の夢のなかへと侵入するいっぴきの猫みたいな、
とにかく客観性も評論も届かないものをおもい、
わずかなゆうぐれの休みどき、
夏の終わりを願い、
休日の忙しさを呪い、
やがて他者や時間に分裂してゆく自己のかたわれのなかで、
日が暮れるのをぢっと見つめてたんだ。