みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

刈り取り

 

 夏のあいだじゅうずっとおれは父の命令で草を刈ってた
 前庭、裏庭、通路、そして隣の空き地、まえの空き地を
 あらゆるものごとは、あまりにもたやすくおれを突き落とす
 汗だくになって、へたり込んでるおれに父が罵声を浴びせ、腕をふりあげる
 毎年、ずっとつづくこの光景の終わりにはいったいなにがあるのか
 溝に溜まった草を拾い、籠に入れて、焼却炉に入れた
 あの夏のすべて、そして惨めらしさ、そして恐怖
 いつ終わるとも知れない仕事
 じぶんの望まないところで起きる、
 さまざまな摩擦、
 そして終末が約束されないところで、
 みずからの熾きを知るせつなさ
 老衰を待つ植物たち、
 自然の自己批評のなかで、
 立ちながら滅ぶ木々のあいまで
 おれはじぶんの抱える問題とか、
 不定形の夢のなかへと侵入するいっぴきの猫みたいな、
 とにかく客観性も評論も届かないものをおもい、
 わずかなゆうぐれの休みどき、
 夏の終わりを願い、
 休日の忙しさを呪い、
 やがて他者や時間に分裂してゆく自己のかたわれのなかで、
 日が暮れるのをぢっと見つめてたんだ。