みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

36回転/固形タイプ


 とうとう36になった。あと4年で40男のできあがりというわけだ。特別、意味があるわけでもない生活。今月も先月とおなじように経済的に追いやられてる。いや、みずからを追いやってる。くだらない古本蒐集をやったり、食生活を無理に変えようとして、残金の少ないなかで、多くの決断を強いられてるというわけで、おれはブルージー。そしてジャンプできない高みを見あげ、じぶんの変化をもっと意識的に早めなくてはとおもう。とりあえず、きのうから酒をやめた。そして買いすぎてしまった、まずい燕麦を喰ってる。金があるうちにパスタでも買っておけばよかったのに。身近なひとも恋人もいない36年。仕事探しに失敗して、湿気の多い室でダニのように這い回る。よせば、よかった。詩歌なんかやるのは。でも、そうはいっても20年以上、やってきたことなんだ。いまさら宗旨変えもできそうにない。書くことが薬や救いになるときもあるし、じぶんのなかにあたらしい物語を見つけることもある。どうやって、最期まで成し遂げるか。それだけだ。
 今月は文学フリマ用の在庫をさらに発注した。短篇集と長篇小説と無料配布詩集だ。来月は非売品の詩集を発注して終わり。なにか、善い兆しがあるといいが、いまのところはなにも見えない。

 

  (無題)
 
 午過ぎから夕方までブコウスキードキュメンタリー映画を観た
 かれの流儀、かれの方法がなにかおれに役立つかを考えながら
 もちろん、そんなものなにもないし、
 かれがセリーヌについていったみたいに
 だれにも勝ちめなんかないってうことだった
 どこへもいきつくことのない舟と、
 果てないように見える人生
 かつておれがだれかであったような、気味のわるい感触
 売れぞこないの在庫にまみれた室で、おれは36回めの誕生日を迎える
 酒浸りでなにもできなくなってもまだ、じぶんの成功譚を夢見る、
 光りに焼かれつづける、うち棄てられた冷蔵庫のような人生
 詩には勝ちめがない、そんなたやすい事実をタイピングしつづけるおれは、
 いったい、なにをまちがったのか
 雨は暮れどきにむかって降り止まないでいる
 飢えることへの怖れ、
 金がなくなることへの怖れ、
 まったく無名のままでうずきに曝され、
 またも裁きを受けることへの怖れがずっと、
 したたかにおれの人生を回転させるんだ、ずっと、ずっと速く
 
 気づくと洗濯にいく金もない
 水まわりは汚れ、
 溜めた衣類からひどい臭いがする
 だれもちかよらないおれの室
 もう何ヶ月も他人と話なんかしてない
 ずっと遠くで鳴ってるサイレンは
 いつ、ここに到着するのか
 くそ、またもしくじった
 ばかげた買いものをしまくった
 黄ばんだ古い本たち
 古いシャツや古いズボンたち
 どうすることもできない速さで人生が進み、
 あらゆる企みが手を着けられないままに遠ざかる
 どうしたものか、おれは腹ばいになってデニス・ジョンソンを読む
 そしておもう、――失ったものを取りもどそうとしないこと、
 他者を怖れるあまり、かれらを模倣しようとしないことなんかを。

 

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ジーザス・サン (エクス・リブリス)

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