みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

mental floss


www.youtube.com

 

   *

 午后9時から、地獄のモーテルで結納式を始めます 新郎は裁断機のなかで鰤の肖像を描き、新婦は米櫃のなかで猫いらずを精製します また仲人は土地の買収に失敗したために養老院の入り口で三角法を学ばれています 是非ともみなさま方におかれましては心臓の熾きでしばらく糸を垂らし、水平ぎりぎりで、

   *

 燃える惑星について昆虫が教えてくれたのは石くれの魂しい あるいは燃える凍土についてかれが教えてくれたのはジュークボックスの涙 枳殻のなかで芽吹くもの、そして切断面に咲いた花の伝説が、いま競技場に移植されて選手の髄液を狙うのはきっと、ぼくがひとり、このレパートリーを立ち去った贖い

   *

 天使の顔面でレコードを回すのは色彩にとって悲しい たぶん、スカートのなかで足が逆さになったときから、じぶんにとってすべてがむなしくなってしまったんだ だから空砲だけを残して、かの女は消えてしまう 戦争は愉しかった 制服の懐いでがぼくのなかで澱む 夜みたいな室で心臓が開店する

   *

 公衆便所に詩人がいる 待合に詩人が坐る 図書館で詩人が眠る 私立大学の屋上に詩人が立つ 皮膚科の診察台に詩人が横たわる 公園の遊具で詩人が遊んでる 野良猫のあとを詩人が追う けれども詩集のなかには詩人がいない

   *

 映像の詩学が帽子をかむってでていこうとするのを蛇の目を持った女が追いかけていくのはスクリーンの裏側 フォルクスワーゲンのバンに乗った映写技師が胡乱げに見つめる彼方に鹿討をする監督たちがいる 踊るならいまだとおもい、おれは上着を脱いでプールサイドを駈ける もはや回復不能の下半身と、

   *

 ビートの混血が音楽を掃射するとき、頬笑む少女が回転式の葡萄に巻き込まれてしまい、ぼくはとても淋しかったのはカラックスの残像だ もはや、もどれない速さで人語が堕落する 移民を堰き止めろとだれかがいった ではこの索漠をだれがいったい歩くのか 答えは電気冷蔵庫すらわからないから、

   *

 戦争はよくないと思います なぜなら桜の国の散る頃にすべての猫が消えてしまうから すべての猫を花に還元する能力が学校には欠けてるから 星の落ちる速度で教室を沈めます 牛乳壜のなかで発酵した月が毎日うるさいんです 戦争はよくないと思います なぜなら制服が汚れるから

   *