みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

すべては無意味/アラン・マッケル=作

    初出『パーシー・アカデミー』誌 1963年 12月号

 クウォーター・パークの酒場でめずらしく呑んでいた
 かれは室でしか呑まない男だった
 もう若くない顔で時折
 笑うそぶりを見せる
 その口もとは
 神経がやられたようにゆがんでさえいた
 かれはいった、「すべては無意味なのかも知れない」と
 そしてつけ足した、「ぼくの父がいったように」
 最後に話の目的を明かした「もし金にならなければ」
 職探しにあぶれ、
 救済支援も打ち切られ、
 せっかくの長篇小説もモノにならなかったという、
 そして長い電話のすえに父にそう宣告されたとのことらしい
 
 クォーツ・ヒルの職安通りで
 かれと最後に遇ったのは10月の第2木曜日だったとおもう
 救命艇に潜り込もうとするかれを咎めて、
 「酒を呑ませる」といったら、
 かれに断られた
 アル中のくせによとおもった
 かれが命を絶ったと聞いたのは知人の文藝仲間からだ
 わたしはなにもいえなかった
 すべてが無意味であることによって

 

アラン・マッケル/1940年、サウス・ダコタ生まれ。父の失業により各地を転々とする。10代から詩を書き始めるも、30代に小説家へ転身。B級アクション小説を連作。代表作に『Acid Down(原題)』、『Combat Line(原題)』がある。そのあと映画関係の仕事をするも、失踪。1982年、アーカンソー州にて一文無しで倒れているのを発見される。州立病院にて死亡確認。身寄りはなかった。享年41。死後、有志たちによって詩集 『Allan Mckelle : Uncollected Poems : 1956-1976』がだされた。 わたしは詩集を古本屋で見つけた。100頁にも充たない本の解説にブコウスキーとの類似性云々の文章があったので買った。かれらに交流はない。