だれかがいったようにロックンロールにも自殺にも合わない時代だ
失うには速すぎた、撰ぶには遅すぎる、そんな時間が過ぎる
莨をやめるように生きるのをやめられない
どうしたものか、そんな時代を生きて、
わたしはすっかり怖じ気づいた
愛がなんでるかをわたしは知らない
きみも愛をなんであるかは知らない
きみがずっと知ったふうな口をつづけるのが不愉快だ
なぜって?──そうわたしはいつも疎外者だったし、
アンプ・スピーカーの具合はずっとわるいままだったし、
きみのいう希望にはずっと脅かされて来たからだ
南半球の歴史──焼け落ちる莨の速度がわたしに迫って来る
詩文を造形しながら描くことの憂さにさんざん厭いて来たからか、
きみのことがいまでもきらいになれないでいる──それはなぜか?
訪れた闇が夜でなかったからとテクニカラーで塗りつぶされたときはこうもおもった
どうか、わたしを傷つけないで
どうか、わたしをはなさないで
どうか、わたしを傷つけないでと
くりかえすほどでもない辞にやられ、
わたしはいささか熱に魘されて、
でも、そのなかで見た夢が事実だったようにふるまって、
きみの腕のなかで、
なくしたものを集めて、
手の届かない将来とともに
わたしはぜんぶ限界だと告げる
じぶんの散在する小さな室で、
まちがい探しをするような快楽が残る
でも、わたしを傷つけないで
でも、わたしをはなさないで
でも、わたしを傷つけないでと
際だったなにかが水鳥の姿をして群れを生す
水禽の夢も黄金色げと変化するだろう
聞えなかったきみの歌声、走りだした運河なんかが、
わたしの想像を超えて疾走するなかで、
憶えたてのきみのリコーダーの味なんかが、
失われた地平で、「おれは死ぬべきなんじゃないか」とくり返す
わたしにはとてもできない、とてもできないことづけだった
こんな混迷のなかできみがひとりじゃないなんていえるわけはない、
こんな混迷のなかできみがひとりじゃないなんていえるわけはないって、
冷め切ったコーヒーを飲み下して、いますぐひとりでてゆく
いますぐひとりでてゆくしかないんだよ、
どんなにつらくとも、そうとも。