みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

a song without birds

 

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 夜の羅針盤に星が侵入した咎で、ミートマツダの主人が逮捕されるのは、これまでぼくが撰んだもののなかで最高の悲劇 陰謀論者とカールスバーグで鯨酔したから、とても大きな鉤で吊された叔父たちが、消えかかった寄る辺を頼りにして自衛官のコスプレをしている

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 問題は進入角に存るんだと校閲者がいったのは暑い12月の夜 椰子の並木にゆれる狐火が冷たく光った郊外の通りで、たったいまポケットに入れた右手が月の裏側に触れるから憮然として男が莨を棄てているのに、どうしたものか、きみはいっこうに井戸水を枯らせないでいる 

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 輝く闇の断片から訪れた焔がたったひとつの生き方であると祖父が呟いたとき、映画館が炎上して、フィルムが蘇生する 黄金の鎖と銀の斧に守られた町が最後の宴をしている だれかにかまって欲しいと、少年が泣いているのは模型飛行機の翼のうえだ もしや陰謀が祖父のなかで芽生え

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 バッドマザーの悪夢を地下鉄が走るのは季節の花のようだろう おもうに自転するカメラのまえでたったひとり演技するものには燃える丘がふさわしいと供述したい 固茹で卵が爆発する市街戦 もういちどきみに会いたいなどと、運ばれながら軽トラックが叫び、暗転するショットはもはや最後の、拠り所で、

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 嫉妬ですら紫陽花に変身する たぶん膣内射精障碍だ だからおれは生身の女に果てることもできない かの女たちのなかを疾走できない、ポルノ依存症患者 画面のむこうの花びらの大回転に狂い、陰茎をしごく宇宙性愛者だ 秋には収穫があると願いながらも、もはや空想の女にも厭きられてしまって、 

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 父は建築依存症だ 家は増殖してみずからを喰い尽くした 母は半透明依存症だ 他人の血のなかで融けた だれもが素顔を失った西日強い室で、食卓を囲むのは死んでいった姉や妹たちの祈りである そういえば3分まえ、油の切れた車が坂を降り、そのまま女体になったという伝説をぼくは編みだしたんだよ

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 紫陽花の禁断症状がでて1週間ばかり きみの室を改造したとおもっている 天井からカメラを吊し、24時間撮影したい テーブルにサンドイッチを固定して腐敗の過程を眺めたいのは銀色の広告動画 アドブロックの毀れた頭でラジオを受信するとき、強力な電波がハーパーズを読んでいる

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