みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

Have I ever talked to you?

 

きのう連絡があって、

ふるい知人と会うことになった

観るつもりだった映画をよして、

時間を確保した

室の掃除もして、

余計なものを片づけた

机にも台所にも便所にも問題なし

夕方というわけで

夕方まで待っていた

Oasisを聴きながら本を読んでいた

するとDMで、「来られない」という

かれは財布をなくしたようだった

失望感のなかで無難な返事

書き送って息をついた

これならきのう断って映画を観たほうがよかった

鈴木清順の『夢二』、

それから海鮮丼を喰う。

きのうはとにかく兵糧の買いだしと、

日用品の注文、

それから趣味のものや、

ポルノを買った

ひさしぶりに人間らしい会話ができるとおもっていたらこのざまだ

おれはおれを売りだすための手段がわからない

ひとと繋がって、うまくやってゆく方法がない

なんだってこんなことに

深い河床を弄るだれかの手が、

黒い鮪のように艶をだす

きょうはひさしぶりに短歌をつくった

短いながらもブランクはおもかった

鈍った感覚で詠み、

それを歌誌に埋め込む

だれもいない場所で目醒めてしまった犬のように

固い閂のまえで珍芸を披露するおれ

そんな幻が暗転するゆうぐれ

おれはあしたの家計簿をつける

買いものリストを訂正する

もはや読み手のない鏡地獄で、

球体となったこのおれが

交歓のないなかで、

Resistするまで、

大した時間はかからなかったというわけだ。

きみの乳房にぶらさがる、そんな感傷も飛び越えて、

おれの晩年が飛びつつける路上で、

「おれはあなたと話しただろうか」と、

いぶかしげにバスを待つ。

バスは来る?