近頃、小便がちかくなってしまった
ガスもやたらに溜まって来る
そして性慾が湧かない
過去への郷愁が薄れて来た
わが晩年にとってこれはいい兆しだ
きょうで12月になる
おれはあいかわらず見放されていて、
どこの、だれにも用がない
そんな暮らしのなかで
少しでも救いが欲しいとおもいながら、
古語辞典のページを捲る
おもいは儚い
そして透明になった茎がおれに降りかかる
兵糧を買いためて、
収納する
町田康の『ムルロアの収納』という歌を口遊み、
長い昼が終わったあと、
おれはジュンク堂で取り置きの本を受け取った
寺山修司『書を捨てよ、町へ出よう』の復刻版だ
オリジナルは¥8,000した
いつだったか、清泉堂書店で買った
帯はさすがに復刻してない
それだけが残念だ
どうしてだかは知らないけれど、
背中が疼いて来る
アテロームの再来かも知らず、
おもわず爪を立ててしまったよ
『無職の夕べ』を歌いながら、
フラワーロードをメルセデスが逆走する
夢のなかのまぼろしを記憶しようする脳〈なづき〉が、
8Kの画質でおれの脳に迫っていた
おれはなにも憶いだせない
おれは過去に負けていた
過ぎ去ったものたちを追っていた
それをよして現在地を確かめる
なかなかわるくない
人生の目標がようやく見えてきた
『Utakata』、『現代詩フォーラム』、『BーREVIEW』、『小説家になろう』をやめた
学びと表現、そして発表の手段を絞ったんだよ
おれを求めてくれるような、そんな臥所を探したんだよ
やがて窓が暗くなる、──暗渠のなかを走る鼡のような仕草で、
あなたがここへ来るのをおれは待っている
おれは待っている
どうぞ、なかへ
どうぞ、あちらへ
やがて扉の小窓から発狂したあなたの声が、
水のように跳ね、そして回転する
そんな光景を温かい光りが
支えようとさっき、
地下道を横切ってしまうんだ。
これが最良の答え、
そして訓示だ
謹