頭上高く跳ねるボールのゆくえまだ知らない曇天
斧あれど農夫足り得ぬわれわずか薄原にて尿をしたり
吊されるごとくにありていまに死す兎のなかの戦争秘話よ
事変近けれどわが足笑う ことごとく変化できぬかげ
やがてみな霧が慰むものとなれ 礫を胸に抱きしめたまま
光りいずこへ 夜の浮浪にでかけゆくわれの眸のなかの満月
冬ごもる長き午睡を目醒めては怠惰に染まる両の手を見る
懐かしくおもうものなし郷愁をうち棄ててみずから果てぬ
苦しまぎれに草木にまぎれ花々に散るこの愉しみよ
魂しいの畔のようだ、舟渡す老夫のなかを奔る赤糸