みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

さびしい日本人

 


 頭上高く跳ねるボールのゆくえまだ知らない曇天


 斧あれど農夫足り得ぬわれわずか薄原にて尿をしたり


 吊されるごとくにありていまに死す兎のなかの戦争秘話よ


 事変近けれどわが足笑う ことごとく変化できぬかげ


 やがてみな霧が慰むものとなれ 礫を胸に抱きしめたまま


 光りいずこへ 夜の浮浪にでかけゆくわれの眸のなかの満月


 冬ごもる長き午睡を目醒めては怠惰に染まる両の手を見る


 懐かしくおもうものなし郷愁をうち棄ててみずから果てぬ

 
 苦しまぎれに草木にまぎれ花々に散るこの愉しみよ


 魂しいの畔のようだ、舟渡す老夫のなかを奔る赤糸