みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

喪失

 

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 星の気まぐれのせいか、頭痛がやまない 方位を失った夜がおれのなかで疼く回数を数えつづける なまえのない花がフルオートで発射された 季節はわからない 地下鉄にゆられる脊髄がいまにも弾けそうだという理由で抜き取られる 熱病に罹った群れが朝を待ちきれない もはや人格のない頭脳で買い物リストをつくるのは大罪だ 小さな手と、大きな翅を比較して、目覚めない朝を反芻する またちがう鏡をわった きみがきみのなかで消えてしまう

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 ぼくは物覚えがわるい 電気に発芽する百閒全集を抱えてダイビングに興じる 船は喋らない テンセン芸者をまた殺した きのうに戻れない理由を植物図鑑で探して、花が咲いた ここから見える景色が鈍色のなにかだとして、きみが時間に耐えることから解き放ってくれるのさ まだ知らない雪のため、まだ知らない森のために そしてバイカーとともに道を流れてゆく

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 比喩は卑猥だったから抹消された 寄る辺のない朝 たぶん、美学が死んだあたりから、わたしの冒涜が始まる 月の消えた虚空に花束がばらまかれ、心臓の彼方でわたしの撰んだ映像が、手を変えた詩学によって消滅するときを待っている

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