みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

青い芝

 

 青い芝は警告だ
 おまえのうしろに潜むものへの静かなる警告だ
 たとえばおまえがボールを見喪ったとき、
 キャッチャーミットがからぶりして、
 おまえはおまえ自身を忘れてしまう
 そしておまえのなかで芽吹くものにおまえは敗れる
 そして長い休眠の時間をテラスの陽差しで過ごすおまえを
 だれもが憎しみ、そして罵る
 賭けに負けた全員が罵る
 青い芝は呼びつづける
 おまえの敗北を
 おまえの辛酸を
 臥所のない町角でおまえが出会った幾千のひとびと、
 そしてテラスのうえを通り過ぎた幾百の鳥たちが、
 小唄を歌いながら世界の淵から落ちていくたびに、
 おまえは罪悪感のなかでもがき、そして力を失っていく
 それなのにおまえはまだ愛を育めるかのような態度で、
 台所へと降りて朝一番のコーヒーを淹れる
 その一滴が失寵の始まりだと、気づかないままに
 たぶん、おれはおまえのことを塵ともおもわないだろうし、
 人生がじぶんの私家版に過ぎず、そして駄作であるのをうっちゃって、
 青い芝の警告を聞えないふりで過ぎて、やはりまたボールを見喪うのを
 人生のささやかな福音として、メイン・スタンドから中継するという妄想に陥る
 正直、おまえのことがきらいになれないんだ