青い芝は警告だ
おまえのうしろに潜むものへの静かなる警告だ
たとえばおまえがボールを見喪ったとき、
キャッチャーミットがからぶりして、
おまえはおまえ自身を忘れてしまう
そしておまえのなかで芽吹くものにおまえは敗れる
そして長い休眠の時間をテラスの陽差しで過ごすおまえを
だれもが憎しみ、そして罵る
賭けに負けた全員が罵る
青い芝は呼びつづける
おまえの敗北を
おまえの辛酸を
臥所のない町角でおまえが出会った幾千のひとびと、
そしてテラスのうえを通り過ぎた幾百の鳥たちが、
小唄を歌いながら世界の淵から落ちていくたびに、
おまえは罪悪感のなかでもがき、そして力を失っていく
それなのにおまえはまだ愛を育めるかのような態度で、
台所へと降りて朝一番のコーヒーを淹れる
その一滴が失寵の始まりだと、気づかないままに
たぶん、おれはおまえのことを塵ともおもわないだろうし、
人生がじぶんの私家版に過ぎず、そして駄作であるのをうっちゃって、
青い芝の警告を聞えないふりで過ぎて、やはりまたボールを見喪うのを
人生のささやかな福音として、メイン・スタンドから中継するという妄想に陥る
正直、おまえのことがきらいになれないんだ