みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

10月の暑い夜

 

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 ブラジルから来た少年が通りで撃ち殺される 被疑者は嘆きの壁で、沈黙を貫いている 取調室は熱で彎曲していて、とても歪だ キュビズムが侵入した形跡もないのに、シュールレアリズムが混入したわけもないのに、ただ一輪の花が中央に活けられている レモン・サワ―が砂漠で爆発したのを皮切りにひとびとが吊るされる 12人の悲しい男たちが階段の裏手で、ファールボールを数えています

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 なんだか、おれが夏だった 夭逝のきらめきを求め、快楽に生きることは南 北ではない南だ 死ぬということに厭いてしまったから、柘榴の枝を伐る もはや憶えのない旋律に乗って、きみの棲む町を通り過ぎる 果たしていままでにだれかを幸せにしたことがあろうか なぜ、おれはおまえになれないのかがわからない たぶん自己同一性の被膜に覆われ、もはや変身できないからだ 遠くで汽笛が泣く そして植物図鑑の謀略で、すべてがデフォルトになる

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 はじめから仕向けられた罠だったのか、かの女は世界の秋を焼き払う 透明な葉脈と、反転する森がファスト・ファッションとともに燃えるのをかの女は笑っている 形式のない惨事と、脚韻を失った魂しいとが混ざり合い、そして器械体操のお兄さんがテレビで手をふるなか、最後の戦いがいま始まる

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