みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

偶成(Pt.1)

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   *


 霧雨や切断面に花が咲く


 林道の祭り囃子や子供泣く


 アメリカや混血児が河渉る


 春の曲子供のひとりうしろ向く


 花曇り女が土のように伏し

 
 酒星も見えずひとりの酌をする


 失いし浮世の夢のちまたかな

 
 山の穴出ず一匹の迷い草 


 雲ひとつ握りこぶしのような春


 いぬふぐりおとこ妾の裾濡らす


 堤にて花がならぶようしろ足


 子供らの眸まるごと五月雨て


 死出すらも快晴なりぬ冬あけて


 老醜のごとくに花の盛りあり


 主なき葡萄の蔦よ春の闇


 花翳む素足のごとに男おり


 コカ・コーラ転がるほどの温かさ


 気分屋の転ぶ三月ひとごろし


 銃声もなく東風を仰ぐまで


 水温む誤解の果ての暮らしあり


 さよりとて悲しむほどの事実かな


 午過の石蓴ばかりで恥ずかしい


 大麻欲し徒寝添える草枕


 鷹は鳩われは鼡と憎まれて


 水太る春雨ばかり窓ゆらす


 供物盗る男の憐れ花曇り


 夜桜や噫、暗黒の雛祭


 暮らす世々ふたたび桜顔照らす


   *