みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

ぼくの電話

 

 
 ずっとのあいだ、 
 ぼくの電話は沈黙している
 当然だれからも声がかからない
 だれかがぼくを知っているはずのなに
 親しいひとすらもぼくにはない
 羽のような塊りが浮遊する午後の窓
 電球を数える子供の声がどこからかしている
 それでもぼくの電話は黙っている
 ぼくはきみの好きなものがすきだとおもう
 でも、きみはぼくの好みを憎みつづける
 階段のない裏庭で、過去にたどり着くという遊び
 その真ん中に誘動円木をしつらえろ

 ぼくが此処まで来て
 だれもいないとしても
 ぼくにも方法と愛が必要だとおもう
 迫り来る壁のなかで着飾った声で
 だれかが受話器を投げる、投げる
 池の鯉のように口をあけた姿をしてなおもぼくの罪を数える
 やめろ、やめてくれとぼくは叫ぶ
 まだ秋色をした萩の花が
 ぼくを待ってくれているところまで、
 ぼくは逃げだしたいんだよ
 階段のない裏庭で、過去にたどり着くという遊び
 その真ん中にきみたちは誘動円木をしつらえろ。