for m
悪夢を謳う儀式をやめられないでいるトラッカーとともに
ぼくはモー・タッカーのドラミングを聴いている
どうしたものか、かの女が左利きにおもえてしまう
さっき尋問のようにつづく高速道路を抜けようとして、
誕生日を失った子供らとともにサービスエリアを抜けたのは午後の真実
ささやかなやさしさでぼくにことづけをする幽霊たちと、
おなじような顔をして、きみが窓に立つ
その一瞬、その挙動
見逃したはずの科白でぼくを責める眦(まなじり)、
いつかは──とぼくがいう
きみを愛せるかも知れないと
小学校で見つけたきみの滑稽なざま
きみがぼくを嫌悪する百の理由のなかで
見失ったはずのけものたちが
とにかく臭いんだ
かれはいま──ときみがいう
すべての望みを叶えたと問う
そんなもの死後のまぼろし、たったいまのうそだとぼくはいう
きみの開かれた家には犬さもいない
透き間から入る泥棒さえもいない
すべてがきみの迷妄だったとしても、
そいつがいったい、なんの障りになるのだろうか
ぼくは13時の離陸に合わせて、
腕時計を組み立てている
ありもしないもの
いもしなかったはずものを追い、
たったひとりこの土地までやって来た
母のようなものを拒み、
父のようなものに耐えた、
たったそれだけのことで人生は消費され尽くされて、
半額シールのようなむなしい烙印を押され、
天国のカリナーワーフでいま、
冷めたアールグレイで、
スコーンを喰う、
それが結末だ。