みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

Culliner Wharf in Heaven


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 悪夢を謳う儀式をやめられないでいるトラッカーとともに
 ぼくはモー・タッカーのドラミングを聴いている
 どうしたものか、かの女が左利きにおもえてしまう
 さっき尋問のようにつづく高速道路を抜けようとして、
 誕生日を失った子供らとともにサービスエリアを抜けたのは午後の真実
 ささやかなやさしさでぼくにことづけをする幽霊たちと、
 おなじような顔をして、きみが窓に立つ
 その一瞬、その挙動
 見逃したはずの科白でぼくを責める眦(まなじり)、
 いつかは──とぼくがいう
 きみを愛せるかも知れないと
 小学校で見つけたきみの滑稽なざま
 きみがぼくを嫌悪する百の理由のなかで
 見失ったはずのけものたちが
 とにかく臭いんだ
 かれはいま──ときみがいう
 すべての望みを叶えたと問う 
 そんなもの死後のまぼろし、たったいまのうそだとぼくはいう
 きみの開かれた家には犬さもいない
 透き間から入る泥棒さえもいない
 すべてがきみの迷妄だったとしても、
 そいつがいったい、なんの障りになるのだろうか
 ぼくは13時の離陸に合わせて、
 腕時計を組み立てている
 ありもしないもの
 いもしなかったはずものを追い、
 たったひとりこの土地までやって来た
 母のようなものを拒み、
 父のようなものに耐えた、
 たったそれだけのことで人生は消費され尽くされて、
 半額シールのようなむなしい烙印を押され、
 天国のカリナーワーフでいま、
 冷めたアールグレイで、
 スコーンを喰う、
 それが結末だ。