みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

He Said

 

 存らしめよ、かれはいった
 ばかな、そんなばかな、
 たわごとはたくさんだっておれは応えた
 芝生のうえを通過する鈍行列車や、
 ハイカーたちのあいだを縫って、
 交通網はさびしい
 だれがだれを裁くのか
 おれが鯖を捌くのか
 ひらかれた天戸のなかで
 ふるえてる女神をいままさに
 犯そうとする、いっぴきの副詞
 助動詞と共同正犯をやらかした修飾詞が、
 おもい灰語のなかで澱む
 いまさらかの女をおもってもなにも帰って来ないという軛のなかで、
 おれが乾涸らびるのをどうか、見届けていて、

 存らしめよ、そうかれはいった
 氷上を滑るキャデラックのように
 流線形の未来を甘受するのに溺れ果て、
 やがて消えていく対象におもいを馳せる
 そのとき、天井裏の住人たちを突き破って、
 おれのなかの女が、妹たちがバタフライする
 たとえば昼餉の鰯とか、冷めた鮭たちとともにして、
 熾き火のないほうへとかすかに動くさまはなんとも賢しい
 けれど、密告の快楽を知った保護者たちがおれを標的として、
 領地の御所を賜りながら、ひとりひとりとなまえを絶滅する、
 運動をしかけようと佇んでる
 固有名詞に厭いたひとびとが眠る墓地の一角で、
 接続詞のあまい誘惑が迫るなか、
 いまさらかの女をおもってもなにも帰って来ないという軛のなかで、
 おれが乾涸らびるのをどうか、見届けていて、
 見届けていて、