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ふるい納屋にしつらえられた祈祷台からひとりの女がジャンプする
1920年代の、イギリス製で、オーク材
スパークしたあらゆる過去が、
ひめられたものを悉く暴露する
だれかが扉を叩く
だれかがそれに答える
長い祝日のなかで冬の花だけが
夏の予感のなかでみずみずしい声を放つ。
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星の在処をおれは探していた
暗い御堂のなかを進み、
3番めの室に入る
そのとき、すれちがった男が木曜日だと識ったからか、
おれの全身をまさぐる季節と、
おれのあたらしい靴で、
おおきな手をふって、あたらしい顔を手に入れる。
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すべてがそれらしいふるまいで去ってゆく
おれの知らない隣人からその隣人へと手渡す花や
過去から現在に至る来歴を失ったかげが
語り合う公園を眺めて、
おれはおれでないものを望む
でも、そいつはボーイングのなかで
気を失ってる。
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愛を閉めだして虹に火をつけろ
判事のいない室できみが現れるまで
鮭の皮を剥ぐ一連の動作とともに
おれは欲に喘ぐあまり、
きみの写真を焼いてしまった
もはや輪郭のないおもいでのなかで
きみの映画論を騙る3人の農夫と一緒に
晩餐会へむかおうと畦をたぐっているのさ。
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町外れのモーテルで、きのう眼を醒ました
近代を知らない、ムスリムのような顔で、
猫が飛ぶ空は、
なんとも修辞学的だった
おれは手紙を書いた
そして棄てた
あらゆるひとが
あらゆるおもいが
消え去るまでぢっとして
都市の中心地できみを待っている。
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