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夏の嵐 かぜにまぎれて去るひとかげを追っていまだ正体もなく
たれゆえに叫ばんか夏草の枯るるところまで歩めるわれは
浴槽が充ちる早さで夜が凪ぐ嵐のあとの傍白を聴け
なにもかもが淡いよ夏のかげろうの辻をひとりで帰る足許
醒めかけた夢が頭蓋をゆらす昼 鍋に刻んだ鶏肉入れる
かたわらにだれがなくとも歩むのみ夏の鏡に揺れる祝祭
なにげなくかの女のなまえくりかす口の運動ですらなくとも
免罪符なかれば奔れ かぜのなか埋もれるだろう陽のひかりまで
満潮のときよ潮を流れ来る魂しいらしきものなどあらず
いずれまた夢で逢おうか弟よきみの非在をしばし悲しむ
so I knew, くちごもりつつテレビにて深夜放送の受信が終わる
ぽっかりと暗くなりたり郊外の花を摘みゆく女がひとり
so I gone, 秒針刻むきみの眼の奥に潜んだためらいなぞも
かすかなれ安らぐときに存るならばきみのなまえをみずから忘る
海岸線ゆられて帰る魂しいのもっともやわいところまでゆく
それでいい 樹下に入れり真昼どき 迷いのなかにもうひとりのきみ
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