みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

無題(即興詩)

f:id:mitzho84:20200418132449j:plain


 かたちづけられないもの、
 なづけられないもの、
 それらの熾きにあってただ立ってるものたち
 ガーゼがかぜにたなびき、
 マスクで眼鏡がくもるというひとりの老夫
 薄曇りの8時26分
 霧を吹いたみたいな窓のなかで、
 わずかな酸化を怖れ、
 レインコートをかぶるひとびと
 だれかが憎らしくて、
 目醒めるとき
 死の誘惑にかられたり、
 ピンボールマシンのあざやかさをおもったりする
 なにもかもが気鬱で、
 できることが見当たらないとき、
 人生そのものを悔やんで、
 声にもできない
 曖昧な欲望のなかで、
 たえまなく称賛されること、
 なおかつ恥をかかないことをおもい、
 じぶんに従ってつくりあげる、
 書きあげる、それでもほとんど多くのものは、
 かたちづけられないもので、
 なづけられないものだ
 やがて静かになった湖水のむこうから、
 見覚えのない水鳥が、その畔に立ち止まって、
 ひとびとを見る、ひとつの蔑みのないまなざしが、
 みなを辱め、やがてわれを忘れて石を投げる。