みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

飛びあがる土地

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 深くなりすぎた坑で男がひとり映画について語る、
 というような夢を見たからか、
 きょうは古くなった冠詞をつかって、
 トマトソースであえた
 なにがまちがいだったのかわからない
 ショットごとの分析がうまくいかない
 被写界深度のなかでアーク・ショットが始まろうとしてる
 でもぼくに必要なのはドリー・ショットなのだと悟る
 アレックスが走り抜け、
 島がビルから転落して、
 やがて血の色だけがなによりも濃く、
 映しだされるのは心臓の位置がわからないせいなのか
 
 けっきょくぼくは見棄てられた田舎者に過ぎない
 アスパラガスを殺した朝に、牡蠣の缶詰に食当たって、
 なにもかもが信じられないというふりをして、
 手紙をより分ける、宛名のない手紙を
 きみがいったいどこでそうしてるのかが知りたい
 そうおもって手紙を書く
 はじまった夜が、
 手をぶらさげたまま、
 古い閂を見つめる詩は
 まだ書かれない
 ぼくが望むのは色分けされた関係性、
 すべてが暖色に変わるようなやさしさと、
 それを補色する無機物とのおもいで
 ぼくはまた港湾で働いてる
 海との接点がやがて、
 黍色に変わるまでだ、
 辛抱をして、
 飛びあがる土地を探す
 きみが愛するカメラマンの、
 そのやり方じゃなく。