少しづつひらかれるまなこを
ふたたび去つていくものは
手のひらへ
あるいは風のなかへ落ち
現れてくるのは青と黄の格子
二月のかもめがゆつくりとかすめ
あらたな軌道を知らす
これが朝なのか夜なのかもわからず
きゆうにかれが立ち上がると
見知らぬひとびとが火種を口に含み
ただ歩いていくのが目撃された
うそをふりまきながらかれは高原地帯の故郷を過ぎ
なにかを振り向いてだれかを繰り返す
まぐその匂いを寒さに嗅ぎ
冬の街へ少しづつ病や酒とともに出ていくのだろう
いま閉じられたまなこを
ふたたび去つていくものよ
あるいは風のなかへ落ち
またしても都市へ密航を企てるものよ
青と黄の格子のまえでぼくは口笛を鳴らす
なにもいわないで