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だれかが階段を上り切って、
此処にたどり着くという幻想を
たずさえていままでおれは待っていたんだ
だのにだれも来やしない
日暮れの街を見下ろすような丘で、
おれはおれの語りにケチをつけている
きのう、西村玄考という京都の詩人がやって来た
おれの歌誌を3部買ってくれた
かれは社会的使命感からか、世界情勢について語ろうとする
でも、おれには興味がそそらない
どっかの戦争も、どっかの虐殺も、おれにはどうだっていい
ひとはほっとけば殺し合いをしたがる
おれにはなにもいえない
だれかがいったように、おれは他人に関心がない
てめえのことでかかりきりだった
きょうは食糧の買いだしで、
卵と乾燥わかめを撰んだ
詩にも虚構にもおれは我慢できない
たぶん『猫──あるいはイギリスの夏』がおれの最期の詩になるだろう
二流の詩人として、それなりに愉しめた
じぶんの本に満足している
あとは短歌を片づけるだけだ
夏にだす最期の詩集はもう書き上げてしまった
あしたの無事が見えすぎる1日
手紙は来ない
メールもない
Bacchusのフレットレスベースを予約したのだが、
それがいつ入荷するのかもわからない
とにかく新しいことがしたい
そして撃破された夢の骸を下水に流して、
きみの長い脚をただ上ってしまいたいんだよ。
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