みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

金魚

 

 真夜中じゅうずっと悲しいニュースや情勢に耳をかたむける
 おれの辞書にだれかが書き加えた永遠のせいで、
 眠ることもできないから
 雨が降りやんだ、その沈黙を
 だれかがやぶって来るのを期待しながら
 やはりだれも来ないのだという予感
 愛のないまなざしをみずからにむける、おれのよすが
 金魚は鉢のなかを一回転する、
 かの女は素晴らしい
 おれもかの女のようにぐるぐると泳ぎつづけていられたらとおもう
 終わってしまった寸劇のように儚く、幼い賭けだった人生
 最後のページを彩るはずのヒロインはいない

 夢想のなかで、
 出会った数々の酔狂人ども
 偶然と渾名された少女がスカートをゆらす場面
 破壊された駅で迷子になった大人たちが心臓を剔る
 湯をくぐっておれは浴室をでていった 
 またしても雨が夜を撲りつける
 亡命詩人が暗殺されたあたりでストップされた画面を
 旅客機が横切ってゆくようなまぼろしのなかで
 金魚は消える、──白い焰のなかで
 そしておれはようやく永遠から
 逃れたんだ。