みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

(釣られてから)百年後に死ぬサバ

 

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*この文章にはステルス・マーケティングが仕込んであります。ご注意ください。

 

 たえまない意識のながれのなかで、無数の意志や夢が日々元気に死んでいく。おれは定職がないし、きみには職場があるようだ。そして愛してくれるだれかがきみはいるようで、おれにはいない。きっとなにかのまちがいなんだろう。この偏執狂じみた、人生の様式とやらは。取り替え可能で、どうにでもなるスタイルがあればいいのか。否、そんなものはない。いちど身につけたスタイルは交換不可なのだ。そんなわけで、けっきょくはいつものビートで、いつもリズムで書き進むほかはないということだ。

 俗事に乗っかるのは好きじゃないが、死んだワニがよくなかったのは間髪明けずに宣伝をやらかし、燃えあがる商魂を見せつけてしまったことだ。ありゃ、タイミングがわるい。売り方がへただ。ナムサン、ナムサン。――と、そんなこととは関係なしにおれは仕事と金をまたしても失ってしまってる。あたらしい仕事の寸前にENEOSでんきから¥9993も引き落とされ、残金¥4。あしたには仕事だというのに、このタイミング――もはや笑うしかない。けっきょくはCD2枚を売って¥700、仏軍のステンカラーコートを売って¥800つくり、仕事のほうはコロナ危機を理由に断ってしまった。あとは炊きだしの列にでも並ぶしかない。きょうは水曜日で、あと6日間(←あやうく向井感と打ちそうになった)、耐えなくちゃならない。耐乏生活に慣れてるといえ、毎回食料にはひやひやしてる。少なくともあと18食は必要だからだ。手持ちはリングイネ2食分、卵2食分、燕麦4食分、パン3食分、即席ラーメン6食分だ。こういうときにだれにも頼れないのが、おれの人徳のなさ、そして友人のなさである。せっかくAmazonのリストを公開してるのに梨の礫である。どっかのだれかのように人気とりができればいいが、おれは愛想がよくないし、書くものもユーモアに欠ける。

 それでもわるいことばかりじゃない。郵便受けに葉書が入っていた。角川「短歌」からだった。それによると、おれの送った歌集「星蝕詠嘆集」を記事にとりあげてくれるというのだ。これぞ僥倖。金にならない僥倖。飯にならない僥倖、サバにならない僥倖・・・・・・。おれはspotify寺尾紗穂を聴きながら、夜にむかって舟を漕ぐ。あらゆる時代の漂流物から搦まれながら漕ぐ。見よ、とくに書くこともないくせに詩人はこうやって行数を稼ぐのだ。ただでさえ不安が多いのに、このままでじゃあ、文学フリマだって中止になりかねない。この災禍がいつまでつづくのかはまったく見通しが立たない。おれがいきたかったイベントもいくつか現実に中止されてしまったし、けっきょくはyoutube東映特撮でも眺めてるしかない。あるいはgyaoで映画でも観てるしかない。
 占星術によれば今年は余裕のある、ひと息つける年のはずだった。だのに現実はそわそわして落ち着きがなく、それでいて、身もだえるようなおもいに駈られてる。だってそうだろう、おれは仕事も食事もままならないし、今後やろうとしてる企みも叶えられるか危ういんだから。まあ、角川短歌の報せだって、少しの手慰みにしかならないのである。

 先日、ポルノ女優=戸田真琴が書いた記事をnoteで読んだ。かの女の文章は足回りがよかった。読者にとって不案内には決してなく、丁寧にことばをつづってた。そこへいくと、おれは先を急ぎすぎるし、じぶんにとって自明なことは平気で省いてしまう。かつて師匠から「小学生でもわかるように書け」といわれたが、それができていない。ことばを尽くして理解を促すということが苦手で、ほとんどの場合、くだらない比喩や飛躍、脱線でごまかし、終わらせてしまう。ひとにわかってもらうということがわかってないのだ。かの女の文章についてtweetしたら、かの女のスタッフから「いいね」が入ってた。かの女本人は果たしておれの発言を読んだのだろうか。わからん。そしておれはかの女の作品を見ていない。おれ好みのコンセプトの作品がなかったからだ。それにそれはどうだっていいことだ。

 きょうは短篇集の表紙を再制作した。というのも裏面に書いた英文にスペルミスがあったからだ。データを一からつくった。きのうも10時から2時までその作業だった。けっきょくトライ&エラーを繰り返しただけだった。今度は1時間で終わった。なんともいい気分。でも、それ以降おれがなにをしてたかといえば時間の空費。音楽を聴き、坐ってただけだ。あるいはまたしてもくだらない世事を眺めて、うつらうつらしていただけである。
 期待するのは「短歌」を読んだだれかが、おれの歌集を買ってくれることだけだ。ほかに好機は見当たらない。だれがどこかであの記事を読んでるのかをおもい計るのみである。ちぇっ、まったく、じぶんってやつがほんとにろくでもねえ、いけ好かねえやつにおもえてくらぁ。
 そんなわけで今年はあまりいい展望は描けない。来月は短歌研究新人賞へ応募し、「塔」短歌会にでも入会しようか。腹は減ったし、なにかべつのものに手をつけたい。けれども、おれの広汎性発達障碍がなにものかへの没入を拒む。参ったぜ、おぃ。だれかおれにウィルキンソンでも送ってくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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