みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

how to writing daydreaming

 

小説を書くという動機を失って以来、

物語が読めなくなった

生まれてこの方、

純粋な娯楽として本を読んだことがない

いつもいつも分析し、技法を盗みだすために本を読んで来たせいか、

どうにもただ愉しむということがわからない

おれが読書に熱心だったのはせいぜい長篇を書いているあいだまでで、

あとはほとんど本の死蔵だった

研究対象として満足のいく本をただ集めていただけだったようにおもう

そしていまはや研究にも興味がない

おれは世にでるために書き殴ったけど、

おれは一歩もそとの世界へでられなかった

真昼の球体のなかでやけっぱちの白昼夢をならべたて、

そして口を噤む

たったそれだけの現象学が

古いアパートメントのなかで産みだされる

ひと知れずに抱えたおもい、

長い時間のなかで多くなった幻想ともども、

おれは見棄てられてしまった

それを解決するには、

小説を書くことも、

ただ愉しみにするしかない

ただじぶんを喜ばせるために書く

それだけかも知れない

ひらすらじぶんが書けそうなものを狙って読むのはやめだ

じぶんが模倣できそうな作風を撰んで読むのもやめだ

じぶんの手にはとどかないなにかを求めて読もう

そうおもってアンプの電源を切る

業務スーパーから帰って、

荷を解くとき、

忘れられた紙片のようにレイモンド・カーヴァーの子供たちが、

左折しながら迫って来て、

このアパートの裏手から、

カソリック教会の尖塔を攀じ登る

帰って来い、おれの欲望

帰って来い、おれの目論見

おのれの生きるよすがも見つからない12月の半ば

10年まえに潰えた初恋の夢とともに

かの女以外の幻想を求める

これがおれの読書論

いままで与えられたすべての文学に対するおれの答え

数え切れない作家の亡霊とともにして、

時間を空費するおれそのものを

本に綴じる作業を

町工場の男たちがなにもいわずにやってくれるのを待って、

いま忘却の扉をあける。

ところできみの幻想を少し、

分けてはくれないか

希望によって舗装された道をおれが走りたいと願うとき、

その目標となる幻想が欲しい

どうか補ってくれ

どうか掴まえて

どんな時間にも分割されない霊力で

おれを裁きにかけてくれ

神の判事にありがとう

神の検事にくたばれ

恐怖の役をきみにあげるから

最後の判決を下して欲しい

おれのなかの作家が死んだよ

水のようなおもいでのなかで意味を失って

プロマイドに焼きつけられるだろうよ

おお、やさしげなひと

きみときみの恋人がひとしくあるように願う

だからきみの幻想を少しだけ頂く

きみの幻想を少しだけ頂く

だからきみの幻想を少しだけ頂く

きみの幻想を少しだけ頂く

だからきみの幻想を少しだけ頂く

きみの幻想を少しだけ頂く

だからきみの幻想を少しだけ頂く

きみの幻想を少しだけ頂く

でも、だからきみの幻想を少しだけ頂く

きみの幻想を少しだけ頂く

やがてたどり着いた納屋でおれは首を吊る

その瞬間、恍惚としたなにかが

おれのなかを走り、

まるで禽獣のように

おれを高い見張り塔まで連れ去ってしまう

そんな光景が必要なんだ

そんな情景が必要なんだ

そんな精神が必要なんだ

そんな物語が必要なんだ

そんな光景が必要なんだ

そんな情景が必要なんだ

そんな精神が必要なんだ

そんな物語が必要なんだ

そんな光景が必要なんだ

そんな情景が必要なんだ

そんな精神が必要なんだ

そんな物語が必要なんだ

必要なんだ

必要なのか

必要なんだ

ほんとうに必要なのさ

ほんとうに必要なんだ

ほんとうに必要なのか