みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

長篇小説『裏庭日記/孤独のわけまえ』について

 

 最初で最後の長篇小説、『裏庭日記/孤独のわけまえ』を刊行しました。自伝小説と、犯罪小説、そして詩が混在するという形式を採りました。二部構成で、前者が『裏庭日記』、後者が『孤独のわけまえ』となっています。以下のリンクより全文立ち読み可能です。

www.seichoku.com

 この小説は3歳時の最古の記憶から、’18年の2月までを書いています。わたしという人間がどういった過程で、現在のじぶんになったのかを描いています。育成歴、犯罪歴、病歴、職歴と、じぶんの人生の私家版をつくったということです。特に初恋への執着、親との歪んだ関係性、社会との不適合さなどを明らかにしています。

 そのいっぽうでアメリカを舞台に巡業中のミュージシャンふたりが田舎の事件に巻き込まれるという虚構を挟んでいます。いままでに愛読してきたアメリカの犯罪小説への憧憬を描ききったとおもっています。本作は、’18年に一旦完成したものの、’23年になって大幅な改稿を施しました。かつていちど幻冬舎の自費出版窓口にて講評を頂きました。それを引用させてもらいます。

 世の中の欺瞞を薄皮を剥がすように皮肉る鋭い視点を持った、詩のような小説作品です。とにかく文章のリズムがよく、言語センスが卓越している。語彙が多いという話ではなく、言葉を操るのが上手い。高橋源一郎か、またはパラニュークやクープランドを思わせるセンスだと感じます。独りよがりな表現ではなく、言葉の組み合わせで読者がどう感じるかをよく理解している文章です。
 劇中に登場する書籍や音楽の趣味は社会に生きづらさを感じ、人生に抵抗しようとしている若者や、かつてそんな若者だった大人が強く共感を受けるものばかり。本書に心打たれるであろう読者層とぴったり合っていると言えるでしょう。
 畳み掛けるような思弁的な文章は人を選ぶかもしれませんが、強く響く層が一定数確実に存在する文章です。老若男女全てグループで多くの人に読まれる作品になるのは難しいかもしれませんが、一部の人間の心を強く動かし、決定的な影響を与えることができる。こうした作品は絶対に世に出すべきだと考えます。もちろん弊社から出版できれば幸いですが、もしそうならなくとも、この作品はどんな形でも形にして書店に並べていただければと思います。本作が、出会うべき読者と出会い、精神的子孫を残すことを切に願います。