みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

夢であることの悲しみ

 

 おそらく、
 夢であることの悲しみは
 だれもない室で展らいた本みたいなものだ
 町の中心で戦争が始まったから、
 エールとビールを開けて祝福する
 ひとを憎悪にかりたてるすべてが好きだ
 でも、これだって夢、じぶんが目醒めてるという夢
 囲いと鈎を身につけた牛が人間を焼く
 災厄が心地よいところまで、
 おれを追いかける
 心理だ
 荼毘だと繰り返す異端審問の男たちとともに
 ファイヤーバードを呑み交わす
 ところでこれが夢だとは
 おれにはもはやわからない
 放熱器を破壊された車がひとり、なまえを失った
 回転するナイフが炎みたいに燃え、
 われわれがもはや個人でないという喜びのなかで、
 いままさに料金所を増殖させる
 意味は敵だ、
 人生は接続詞だ、
 そして折り重なった死体にはだれであれ、心を動かされる、
 そしてだれとも問わずにその夢に悲しむ。