みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

枯槁(2018)

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 頬を打て
 小径から冷めた霧の、
 遠ざかる、
 みそひともじの歌声は、倫理の、
 呼びかけと
 はらからのうらぎり
 うつくしい児や、
 《まなざしの》 
 うらめしい児や、
 《まなざしも》
 みてぐらとともにおまえの日の戯れも、
 火のなかへ焚べてしまえ、
 藤袴
 石はかの女を見てる
 嵯峨野の役所から
 安積の沼地。

 ひとの燃える温度
 薪をわる手斧は
 もはや薪をわるだけでは済まされない
 古帽のなかへ顔を匿い、
 地唄で土を這う
 雨だ、
 ふるき吉野の苜蓿、
 またしても経験へと降りしきる、
 雨だ、
 きみはきみを殺し、
 どうしてそんなことに
 《まなざしの》
 どうしてそんなことで
 《まなざしを》
 あなたは海を見てる
 サハラの兎唇
 芦鶴の虫垂
 それからずっと枯槁
 それこらずっと枯槁。