みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

the burn out dreams


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どっかで「書くことによってじぶんを傷つけている」とブコウスキーは書いてる

そうとも、多くの作家志望はそんなありさまだ

文芸は長期的に見ると、とても不愉快だ

毎回、じぶんが幸福でないことを確かめることなのだから。

幸福の原感覚を持ないおれに

いったいなにができるのかという疑問を

いつも突きつけられている

遠かれ近かれ、自己洞察や自己限定に接続された文学は

やがて書き手の魂しいを危機に追いやりさえする

自己とは無縁のことを書き綴る作家もいるが、

おれはそうじゃない

おれはそんなに器用じゃない。

あたりまえのことをあたりまえにやれないじぶん。

どっからやって来て、なぜいまここに至るのかを考えていた

なにもできなかった、なにもいえなかった歳月

これまでやった殺しの数々

だれもがマネシツグミのように

通りを横切ってゆく

おれにはもうなにも書けない気がする

桜はもう散ってしまった

次は安いモノクロ・フィルムでも買おうか

3本セットで¥2,000と端数だ

モノクロには自信がないが、

とりあえずの処し方だ

だんだんと、じぶんの空虚さが

浮き彫りになってしまった

それを埋めるのは方法か、分裂か

もはや精神病院がなんの助けにならないことを知ってる

やつらにはひとを治療なんかできないのを知ってる

おお、おれは手放してしまう

これまで書いた多くのことをだ

もはや帰って来ない大鳥に

捧げるものはなく、

いまという時間のなかで分割された欲望を羽のように仕立てて、

地平線の起源すらも忘れて、

過去のなかに埋没してしまうんだぜ。

おれの徒然〈11〉「もう、いやだよ」篇

   *

 希死念慮がぶり返している。春になるといつも、どうにも心身の安定がむつかしい。一昨日、届いたフィルムをさっそくだめにしてしまった。おれの手はあまりにも不器用で、フィルムの装填さえできない。歌誌が終わって、どっと疲れたのもある。酒が切れたのもだ。夢を見た。またしてもいまの住居を喪う夢である。こういった夢はなにを意味しているのか。どうだっていい。とにかく2時には眠った。10時に電話。そして11時過ぎて起きた。いまは茹で卵をつくっている。なにかと気が焦る。きのうの夜にblogを更新したものの、だれも★を入れてくれない。だれにも読まれていない。午後から肛門外科に受診だ。切れ痔がぶり返している。排泄のときはいつも血がでる。やってられない。治っているあいだに手術を受けりゃよかった。また検査して、様子見だ。でも治まったころには忘れてしまうだろう。おれはいつも忘れるんだ。

 

 

 物質的恍惚や陶酔は幸福を産まないことに気づかされる。室には多くの本やレコードがあるのに、それについて語り合う友人がいない。恋人はいまだにいない。もうじき40の鰥夫で、人生にもそろそろ陰りが見えて来た。できることと、できないこと、やりたいけれど、やれないことが見えて来た。多くの失意と欲望に遊ばれ、いまや臥所もない。身を曝して、それでも遮蔽物を探す羽目になっている。汚い室で、なんの対話もなく生きつづけることは苦しい。
 わが師は「文学をつづけろ」という。でも、その方法がわからない。そろそろ書けなくなって来た。きのうの夜、歌詞の断片を書いたが、それは文学ではない。短歌がじぶんにふさわしい生き方だとはいえない。たしかに作品とおれは不可分だ。しかし暮らしのなかには明らかに歌人でないおれもいる。そいつは惨めな人生をつづけているものの、継続の意思は乏しい。肉親ですら愛さないおれを、愛してくれる他人などいるのかとおもう。ライブ出演で出逢いを獲ようともおもった。去年、「DxQ」という小さなハコで1回やった。おれには弾き語りができなかった。練習不足もあるし、基礎的な不勉強もあった。それに客がいないに等しかった。次は電子音楽でもっと好いハコにでたいけど、機材が足りない。ルーパーとアナログディレイと打楽器だ。正直、いまは気分が乗らない。来月、ルーパーを買えたらいいとおもうだけで、物事に打ち込むには意思が弱すぎるんだ。モップスに「もう、いやだよ」という歌があるけれど、あれが聞えて来そうだ。

 

 ”ため息が雲になる”──キングブラザーズはそう歌う。おれもそうおもう。破滅と恢復との往復に疲れて、身を滅ぼしてしまった気分。あらゆる過去、あらゆる呼び名とともに明滅している信号機のまえで夜を忘れた猫が午睡をする時間。おれは惰眠を貪って来た。その咎を受け止められずにいる。時間は短い。アルバムのデモを2枚、EPのデモを1枚、あとは電子音楽を3枚分録音できたらいい。あとは絵でも描いて余生を過ごしたい。エネルギッシュな時代は過ぎた。去ってしまったものを呼び寄せる方法はない。
 現在は過去のじぶんに対しての仕打ちの結果だ。きのうもきょうもギターに触れていない。そういったことの積み重ねがいまをつくっている。40前後の孤立者たちにいいたいのは早めにじぶんの死について考えを深めろということだ。死が際立つほどに、やるべきことが見えてくる。といっても、これを書いているおれの気分はロウで、しばらくは変わりそうにない。いったい、どうすればいいのか。25日までは文なしで、希望はない。だれか、おれをパーティに招待してないだろうか?──生きる意味について過大評価していたのかも知れない。べつにすぐに死のうって気分じゃないが、文学を離れ、音楽面でそれなりにできなかったら、また考え直す必要もでてくるだろうな。 

   *

 ところで買ったばかりの本、早川義夫『女ともだち』をいくらか読んでみたのだけれど、このひとの文章は読んでいて楽しさというものがまるでない。本人が倖せであるということしか感受できない。それは作者の問題ではなく、おれ自身の幸福感覚のなさがに起因するんだとおもう。もはや妻を娶るとか、子供持つとか、そんな年齢を過ぎてしまったものとしては、だれの悲しみも雑音に過ぎないからだ。

   *

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歌誌「帆(han)」2024 春《第3号》、刊行

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 4/10より歌誌「帆(han)」2024 春《第3号》をだしました。本来の予定では去年の冬号としてだすことになっていましたが、執筆者の欠員などが重なった上、そもそものテーマ性の欠如、さらに原稿そのものの沈滞もあり、春に移行することになりました。今回は特に花島大輔氏との共作『短歌に於けるマニフェスト』に時間がかかりましたが、御陰様で好い作品ができたとおもっています。

 

収録作=


序──憶えていないこともある(2)
★★★
短歌に於けるマニフェスト/中田満帆+花島大輔(3)

漂流/高代あさ(14)
光れ、そのまま/帛門臣昂(18)
オータム・ブルーム/奏多めぐみ(22)
月光/鷹枕可(27)
赤い春/如月(31)
メゾチント/佐野勉(33)
水馬の跳躍/倉持カフカ(37)
往にし声音/yasu.na(41)
the last days of disco/U⁻REI(45)
鮪が赤い。/中田満帆(49)
★★★★★★
実践現代呪文学ノート/きのゆきこまち(54)
批評の立場・歌の鑑賞/花島大輔(72)
歌の条件/yasu.na(97)
アンダルシアの月球儀──或はフィレンツェの馬/鷹枕可(102)
ハイティーン歌人評/三浦果実+中田満帆+花島大輔(104)
映画『PERFECT DAYS』──あるいは安全な賭け/下山陽造(107)
自由欄○詩篇──羽田恭(109)、田中教平(112)、飛田新一(115)
特別寄稿=森 忠明(117)、佐々木英明(120)
参加者来歴(122)

 

序──憶えていないこともある

                                            

 現実言語と虚構言語を繋ぐいっぽんの線としての短歌をつくりたいとおもっている。これは詩でもおなじで、そういった橋渡しのような役割のないものをわたしは詩とは認識できない。そうとも、わたしはとても偏屈な男なのである。いまは最後の詩集をつくっている。40歳の誕生日にだす予定だ。それからはもう文藝は短歌いっぽんに絞る。去年、小説をぜんぶ完成させてリリースした。いまは詩だ。じぶんの作品になにか欠点があったとすればイメージよりも語りを優先させてしまったことだろう。頭を酷使するようなものばかり書くようになり、眼や耳で愉しむような作品が少なくなっていったというのもある。
 おなじ夏には5年ぶりの歌集もだすつもりだ。前作とはちがい、長期間の作品群から撰ぶのではなく、基本書き下ろしである。それは季節の統一感が乱れるという問題を回避するからだ。前作では春夏秋冬という歌の順序に手子摺ったし、季節の辞を入れ替える羽目にも陥った。そういった失敗の種を次回は産まないようにしている。詠い惜しみをするつもりはないが、短期間で仕上げる予定である。いまのところは準備体操ほどにつくるばかりだ。
 わたしはみずからつくりあげたものたちに脅えることもある。さながら、あのヴィクター・フランケンシュタイン青年のように。しかし怪物を産みだした咎に全身で応えるつもりでいる。あなたはわたしや、この歌誌の参加者たちが狂犬のように見えるかも知れない。たしかにわれわれは喰らいつく。しかし、その方法はよく考えているつもりである。あるいはわれわれは呑み込む。鯨のように多くのものを呑み込む。しかし、やがて深海に腐れて、新しい種族たちの餌場になるだろうとおもっている。
 憶えていないこともある。しかし、そんなことは取るに足らないことだ。いまをしゃぶり尽くす、そんな歌人たちを待っているのだ。

 

take it as it comes

多くのものを喪って来た

多くのものを獲たふりをして喪って来た

茫漠な時間のなかで、なんのよすがもないことの重さが募る

なにもできない自身を監督する映画作家のような気分

10月の湿った鼬のような気分

きのうは金を遣い果たした

本とフィルムと食糧を買った

夕方にひとに電話、

するとべつの人物がおれに電話、

そのままSkypeで話す

終わって拠り所のないじぶんを見つける

創作?──それについては話せない

話すことなどなにもない

フィルムは装填ミスでダメになってしまった

なかなか自動巻き上げに対応できない鰥夫男

無邪気な神の手さばきにやられる

鬼退治をし終わった桃太郎たちのように

おれたちは物語を〆くくれない

深夜高速でひとり夜になれない男が

坐席のうしろでいつまでも不定形だ

詩は完成の放棄だといった詩人、

そして文学なんて眼もくれずに去ってゆくひとたち、

おれもいまの世界の完成を放棄したい

文学なんて眼もくれずに去りたい

詩集と歌集をだすこと、

そして夢の文法に使えて、

ありのままを歌うこと。

そろそろ書くことをやめたい、

長く眠りたい、

酒という宿厄、

言語表現の寒々しい荒野より、

暴力的な出会いの場としてのなにかをおれは渇望すらしている。

 


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step making sense

きのうはひさしぶりに動いた

金がないときはじっとかまえて動かない

それに歌誌のこともあった

ひとの原稿を待って、

焦らされる

そんな状態だったから、

なんにもしないで日を過ごしていた

唯一作業所の在宅があるだけで、

あとは呆けたつらで、

その日を送った。

きのうは食糧を買いにでかけたものの、

一往復で疲れ切ってしまった

フィルム──まちがってスライド用を使ってしまった──現像料¥2,200もした

あとはPCのまえで歌誌の発注を繰り返したものだ。

きょうは朝から買い出し、

公共料金を2ヶ月分払った

懐はさみしい

ガスの調査人が来た。

あしたは三浦果実氏が来る予定

洗剤と消臭材を買った。

服を洗濯にだした、

ファブリーズは買えなかった

中川五郎氏に献本、

勝川克志先生にメール、

早川義夫さんの本を買った。

おれはなんとか浮上したい、

他人を蹴散らしてでも、

浮上したい、

なんとしてでもじぶんのなまえを売りたい、

そのためなら顔だしインタビューチャンネルにだってでてやるさ。

おれの39年もの鬱憤を晴らしたい。

できることはなんでもやる。

過激発言?──いいさ。

政治発言?──まあいいさ。

誹謗中傷?──ごめんだね。

宗教?──おれの知ったことか。

あらゆる太陽にむけて、じぶんの肛門を曝すような冒険を

スパパパーン!!

だれかオファーしてくれよ、

だってじぶんの創作で生きていたいからだ。

スパパパーン!!