みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

遠ざかる肖像たちへ

 

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 ジム・トンプソンが殺される ファッションはキュート、でもダーティー 宇宙服で着飾ったブッシュマンが標的にされて久しいけれど、百貨店は脚韻の世界だから、製氷皿を片手にハバナを恋しがるのをだれも止められない 涙が溶接されるとき、天国の中二階でおれのあの娘が歌うのだ、ズゥー、ズゥーと

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 フランス・ギャルが好きだった ボブ・ヘアのかの女が好ましかった 伝説のない歌手の数多がホームで暴露されるのはおまえのせいだからファトワを宣言する うつくしいものが水のなかにしかないとき、知人の電気工と連れだって戯曲を発電しようと試みるが、馬だらけの劇場には3馬身もの鮪があるらしい

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 サリンジャーを引用できない 死がわれわれのなかでもっとも正常な状態であり、不在こそがわれわれのうちでもっとも親しい存在だから J・Dは、おれにとってジョイ・ディヴィジョン 永遠の慰安所でダニエラの日記を読む猫が、天孫降臨!──と叫んで以来、東海岸ヘンリー・ミラーのダミーで溢れ、

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 ブコウスキーの墓を見たい ムッソーズでウォッカ・セヴンを呑み、魂しいの感度を確かめるのが狙いだ 無調性の詩心と、瑕にまみれた両の手でおまえを抱きしめたい 助けを呼んでもだれも来ないよ、さっき警察無線を遮断したから 侵入できるのは堕天使だけ アコーディオンを奏でる悪魔だけ 信じろ

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 ゲンスブールを幻想する公営団地の一角が光りのなかでおれを捧げる 愛されたくはないが愛されたい いまが耐えがたいからずっと西神山手線にゆられ、子宮のメトロを旅する半時間の神話体系がシャンソンを嘲弄、ブラジルの現実からフランス国歌をふり下ろすのは単なる事実だ

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 テラヤマは白昼夢のなかで醒めている 懐かしいわが家が1時間国家にまで拡大する時間 絶えず、だれかが呼びかける 女将校たちの群れ なまえを生産する機械のようにかれの手が回転する夜 劇的か、現実的かの縫い目を拐かし、やがて汽車と馬とのデットヒートに身をまかせる 

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