みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

憐れなるもの

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あるいは「おれはイアン・カーティスのものまねに過ぎない」。


 深夜、たったひとりでイアン・カーティスのものまねを踊っていたら、
 朝になって苦情の電話が管理会社からかかりやがった
 バリトンで吼えながら、「残虐行為博覧会」はまずかったんだ
 せめて「死せる魂」にするべきだった
 イアンを身ぶり、手ぶりするのは危ないことだ
 もっと突っ込んでいってしまえばキ印だった
 おれはきれいに、きれいに死にたい
 淫欲時代を懐かしみながら、
 最後の盃を慈しむ
 そんな光景をおもいながら、それでも死ねないでいる
 スコットランド・ヤードに追跡されるという妄執とともに
 21世紀を闊歩しているのは正気の沙汰じゃないぜ
 三幕一体の作劇に尿を放ち、
 サム・シェパードの戯曲を読む
 黄金の緑が解けだした画面で、
 さっきはひとりの女が投身自殺したけれど、
 おれは生憎高所恐怖症だから、
 薬を嚥むだろうな
 そしてガスをひねる
 女は伝説の譬喩ならば、
 男は寓話の譬喩だろうか
 疑問符と感嘆符をとりちがえ、
 人生を再建できないペソアの同胞たちと、
 ヴィクトリア幻想を学ぶしかないんだ
 首を吊ったイアンと憐れさのなかでまだ生きているおれとの
 回路が見当たらない駅の券売機で、
 地獄への切符を握りながら、
 ルンペンの男をいま観察している、
 きみはそれを懐い描いて、
 そっと笑ってくれよ
 そっと笑うんだ。

 


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残虐行為展覧会 (1980年)

死せる魂

サム・シェパード一幕劇集