みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

週明け

 シルヴィア・プラスの遺体写真を眺めながら昼餉を片づけていた
 ガス・オーブンに突っ込まれたかの女の上半身、
 死の直前に最高のユーモアを発揮したという、
 モリッシーの言葉を懐いだす
 おれにとっての『ベル・ジャー』はいまだ
 いまだ見えないままで

 遙か未来にあるだろう、展望だろうと希望だろうと、
 そんなものなんかハナから信じちゃいないおれだって、
 少なくともじぶんの死を観察し、批評するぐらいの場所と時間が欲しい
 だっておれ自身がおれの最高の観客だから
 汽笛の聞える丘でドアを施錠する

 意味論のながい道を逆走してここまでたどり着いた
 だれかがおれを見守ってくれていればいいとおもいながら
 そんな幻想を永久運動させながらたどり着いた
 なおもおれを孤独のうちに疎外する現在をあざけって、
 花の蘂のような心を鳥の姿に鋳造して来た

 なんだってこんなところに萩の花が
 それにいま時分にどうして配達人が
 おれはとまどってガス火を入れる
 大鍋で茹だる赤インゲンの匂い
 香辛料とトマトの赤い色
 いままさに始まった戦いを実況中継してくれる七人の花嫁を
 いまになって求めてやまないんだ。

 

シルヴィア・プラス詩集

シルヴィア・プラス詩集 (双書・20世紀の詩人 4)

ベル・ジャー (Modern&Classic)

モリッシー・インタヴューズ