みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

赤い柄の鋏(2005)

 

 はずんだ綿パンの臀が木の向こうに沈んでいく
 赤い柄の鋏をもって姉は花狩り
 嵐の翌日に万物はゆるみきって
 ところどころ溶けている
 濡れているものはどれもこれもイヤラシイ
 妹たちは犬の散歩に頑としていこうとしない

 そのいっぽうで遭難者たちは
 夕までにみな帰る
 濡れていたものは乾き
 狸は庭から引き揚げ
 鳥は廃ダムの巣にもどって
 ただひとり狡猾なおれが昇りたての月をもぎ取っていく
 鋏をもって姉は目下、行方不明