おそらく大勢の詩人たちが宙に浮いているというのに
ぼくには飛ぶ空がない
時代から取り残された残り火として
ただ未明のかすかを照らしているだけだ
おもいだしてみればいい
きみが廃墟の配電盤をあけたとき
たくさんんお雀蜂がきみになにをいったかを
ぼくらは棄てられた貯水タンクのうえで
ひそやかな暗号を交わしたはずだ
記憶はどれだって遠いものだ
裏切るものをつくるためにぼくらの幼年期は過ぎて
あとに残るのはたくさんの狐火
生野高原の森のなかでぼくが放った多くの言葉は果たして石となり
草の実にかわる
数多い葉っぱのなかで
雨に濡れながら息絶えている
共有するものはなにもない
ただ孤立だけは歳月をかけて
あじわっている
ぼくには飛ぶ空がない
ぼくには走る原がない
ぼくには唄う歌がない
ぼくには見る色がない
ぼうには描く人がない
ぼくには愛す人がない
ぼくには名乗る名がない