みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

放浪のはじめ(2005)

 

 孤独が夜更けてひとり歩きだした
 叱られていき場のない少年のように
 十五のころに帰ったように
 看板のなかの
 派手なべべを着た娘の
 その胸に手をあててみたり
 雨に溶けだした聖母像の肩や頬に
 顔をすり寄せてみたりして
 孤独にいっそう磨きをかける
 触れられるのはとまっているものだけ
 美しく見えるのはとまっているものだけだ
 動けないもののために美があり
 いき場のないもののために美があり
 触れさせる孤独がある
 しかし触れたってなにもないのだけれど
 なにもないのことがなおさらに愛しく
 なにもないところに放浪ははじまる