みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

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 若さになにか意味があるとして、それは失ってから考察されるもの
 アパートの外壁工事が始まりだした7月の中空をおもいながら
 高圧洗浄機の唸りを聴いてるのはおれが敗れものだから
 きょうは仕事にありつけなかった
 残りわずかな金を気にして
 身うごきができないとき
 そいつが来るたびに
 おれはどうしようかと手をふるわす
 公共料金、
 欲しくてたまらない稀覯本についておもう
 おれは失敗した
 港湾労働はもはやおれをお呼びじゃなかった
 おれの読者も減りつづけてる
 いっそすべてがゼロになるまで
 おろかしく書きつづけようかなんておもったりもする
 でもそれは叶わない
 けっきょく方向を変えて、
 またべつの穴に落ちるだけ、
 落ちるだけなんだよ、愛しいひと、そして愛しくないひとよ
 まるで廃棄されるバナナだ
 黒くなって、
 汁を垂らして、
 ぶざまに放り投げられるそれだ
 生きていく場所が見つからずにおれはずっと、
 こんなふうにうろたえているばかり
 きのう、
 職場の女たち3人出会した
 かの女たちはおれをからかっている
 かの女たちはたぶん難聴なんだろう
 ひとりだけ髪のみじかい、若い子がおれを不審そうに見つめてる
 どうだっていい、おれは心療内科へいった
 女のひとりがいった、
 ついていきましょうかって真顔でいった
 からかわれてるのはわかってる
 それでもなにかにすがりたい気分だった
 ネットオークションに「パリ、テキサス」の写真集があった
 いま、それを落とす金はない
 過ぎ去ったものへの哀傷とたえまない悔みのなか、いま炭酸水を呑み干す
 おれにできることがあったら、教えて欲しい
 たとえおれがどんなくそやろうでも、
 こんなむなしさには耐えられない
 からっぽのなかで落ちるだけなのか
 若さになにか意味があるとして、それは失ってから考察されるもの
 おれはそろそろ考察をはじめるべきだろう、それはわかってる
 だからここで身もだえるような暑さのなか、もうひとつの可能性に賭ける
 それがいったいなんなのか、おれですらわからないというのに
 どうか、おれを遠ざけないでくれ、ともに天に見放されたもの同士で、
 できるかぎりをやってみせよう、たとえそれが、
 大勢のなかをうしろ歩きに進もうとも、
 たったいま14:58
 おれは印刷にでかける
 みずから産みだした亡霊を再現するために
 きみが裸でおれを待っててくれることを祈りながら