みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

おれの徒然〈02〉

 《監房のなかで、かの女はじぶんの罪について考えることもしなかった。ただこの世界との違和感を消し去ってくれるような迷妄を求めていた。ほかの拘留者たちと話もせず、ただただ迷妄の扉がひらくのを心待ちにしていた。格子窓の外はまだ午である。夢を見るのは早いというのにかの女の閉じられた眼は人生など死に際の夢に過ぎないと確信していたのである。》

 旧いノートを漁っていると、たびたび小説のような文章に差し掛かる。物語にならないうちに終わってしまった断片がある。おれはじぶんが味わって来たさまざまな虚無をおもいかえす。そしてタイムラインに唾を垂れる。ああ、もうすっかり、終わってしまったんだ。青春とか、可能性とか、欲望だとかは。

 きょうは図書館へ。9冊、予約したものの、3冊しかない。あとは期限切れでキャンセルされたんだ。長い道程を歩いてこのざまだ。帰って再予約だ。汗を掻いた。湿ったセータを脱ぐ。洗濯代もない。昼餉を喰い、音楽ライブラリを整理した。

 きょうはツェランの詩集を読みながら夜を待つ。午睡もしない。今週は土曜日まで作業所は休む。特別なことはなにもない。週末のイベントにそなえてギターを、歌を練習するだけだ。心配なのは弦の予備がないということ。オーガスチンのブラックナイロンが手元にない。心細いのはそれだけ。

 おれが運命とやらにしてやれるのは裏切りだけ。そいつが確かになるまえにことを終えてしまうこと。でも、もしかしたらそれを含めての人生なのかも知れない。余剰精神を書きためて、それを詩と呼称するようなマネはしたくない。

 blogは好調でけっこうだが、それが金にも暮らしにも繋がらないのはむなしい。じぶんがたしかに文章を綴っているということの自己確認でしかないのではないかという不安。それでもきのう32人が読んだ。そのなかには愉しめたっていうひともいるのだろう。なんにせよ、愚痴を零しても仕方がない。というわけで、夕方の爆弾にそなえて、おれは湯がいた肉を皿に盛るんだ。──ああ、そうとも。

 


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