おれたちがいままで読まされてきた詩っていうのは、ほんとうの人生をおれたちから隠蔽してる。それをおれは信長書店というアダルトショップのグッズ・コーナーで痛感したんだ。ローションを撰びながらね。とりあえずは、そのときの気持ちを一篇の詩に込めた。それではお読み頂こう、「チューイン・ガム」。
おれが犯されてるあいだじゅうずっと、
チーコは笑ってたっけ
くちびるのあいだからずっと、
チューイン・ガムを垂らしながら
消防署だとおれはおもった
電話をかけて真っ赤な車を呼ぶんだって
でも、
おれの口にはチーコのスカーフが
スカーフが猿轡のかわりにあるから
人語のかけらすら話すこともできなかったんだ
やつはおれの両腕を掴み、
上半身が天井にとどきそうになる
なんてこった、
まさかおれがあんなちっぽけな女友だちにやられるなんて、
おれはあのとき女に犯されてしまってたんだ
ちんぽの梁型がおれのなかを突きあげ、
搔きまわすなか、
チーコはずっと台所から笑ってたっけ
おれは壁に貼ったまんまの、
高橋由一の絵を見てた
鮭だ
半額シールを貼られた切り身がおれの脳髄を高速で駈け抜ける
まったく女を敵にまわすもんじゃないぜ
そんなことをしたらもはや
生きていられないぜ
うしろの女が
ようやくディルドを抜いたとき、
おれの頭のなかじゃあ、
どうしたものか、
フランス・ギャルの歌が、
コンピュータ・ノマ・トライが流れてた
わたしのコンピュータ・ノマ・トライ、わたしのカレシを見つけだしてよ!
背が高くてかっこよくて、なによりも金持ちなカレシをお願い!
まったくたわけた気分じゃねえか
チーコのチューイン・ガムをかの女の唇から舌でからめてとって、
そのままかの女の乳房に顔を埋めたせつな、
おれは気を失って、
しょんべんをちびりながら、
冬のくそ寒い浴室へと運ばれ、
そして天にも見放されたというわけだ
チーコ、もし来世であったらおまえの友だちもろとも、
チューイン・ガムみたいに路上に吐き棄ててやるからね!