狐火に降る雨寒夜男来ぬ
飛びかたはなめらかならず鴎の画
画のうちの木工ひとり休息なし
古本と少女はひとつ過ぐ冬の
初冬の男たずさう表紙絵は時化て
灯火のいろいろのみか画面の都市
凪失わば飛ぶそらあらず一羽の青年
飛ぶそらもあらず精神病棟の冬
おもかげを充たして枯るる木木並び
死を書けば枯れ葉とともに午后訪れる
飛ぶもののかげの青きに手は触れ光り
答えもたずが枯れ葉の問いを胸に抱くかな