みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

雨(2007)

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 水化粧して傘が放つ色気、あるいは微笑み 持ち主をよそ目にかれは大きく誘う 光りやら風やら色のない色を きみは遠いところから来た、真っ白い秋だ

 狭路を丘へのぼる車 その咳払いは道路改修工事へ 照明の光線に雨は暖かく、やわらかい べつに好きだってわけじゃないが きみの群れを見て安堵したよ

 音が道を剥がしていく 掘削機の唸りと作業員の叫びは かつての舗装と個人の空しさを葬った きみが笑いながら過ぎる 立ち止まってだれもいない秋晴れを思った

 けっきょくは寂しい 道づれのない、力み返ったゆびがいるはずないひとに触れる か細い幹になまえを刻もうとしてみずからを傷つけたような 痛み 

 ああ、土色が見えてきた 光りのまえにふたりの男が立っている 黄色いヘルメットが青いヘルメットへ叫ぶ あの車、女の子乗せたまま行った!

 そんな声が発ち、傘のないおれをきみは少しだけ見た 孤独や意味を歩道へ落としながら おれは解釈の糸をたぐり、見知らぬわが家へ向う