みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

ジューク・ボックスの時代に

ジューク・ボックスの時代に

 


 水鉄砲撃ちつくしたり裏庭を駈けて帰らぬ幼年の業

 

 美少年クロスロードにさしかかり魂しいの値をきょうも数えん

 

 翻るワンピースや物干しの彼方に失せる数千のきみ

 

 怖じ気づいて去るぼくの姿よ泥濘のなかに紛れん犯意の確かさ

 

 ロックンロールの墓を建てたい真昼どきレコードいちまいわってしまった

 

 成長を遠ざけながら歩く牛挫折したいと駄々をこねてる

 

 國薫る亡びのときをかぞえつついまだ知らないやさしい姉さん

 

 ねこやなぎ二月のぼくのまぼろしにきみの再誕として芽吹く

 

 燃ゆる納屋去りゆくすべて比喩なれど焼け残されしはきみの肖像

 

 ぼくたちのまだやはらかなうちがわにきみらしい棘をひとつ捧げて

 

 恋人のいない人生抱擁は死神さまにまかせるつもり

 

 日ざかりの駐車場にて語りあう未成年者のロードムービー

 

 花曇り鰥夫ぐらしの果てぬまま「パリ、テキサス」をひとり眺める

 

 青年のころをおもえばあまりにもかわり映えなくおれは老いたな

 

 恋というものも忘れて中年の黒い帽子の鍔に手をやる

 

 おもえばきみのようになりたかった百葉箱にもぐりこむ猫

 

 町あかりテールランプの赤色に頬染めながら過古が去りゆく

 

 旅を知らぬ少年のまえにヤッケ姿のおれはタイヤを転がしていたり

 

 ねずみいろみずいろきいろあかねいろきみはしらないぼくはくろいろ

 

 ささやかなことでもいいとぼくはいいたとえばきみの手を握りたい

 

 

きみにとっておれが善良でなくとも

 


 すべての郵便局が驟雨に呑まれてしまうまえに
 メルセデスを叩き潰し
 それからふたりで甲殻類を喰いにいこう
 文鳥が鳴きやむまで
 腹いっぱい

 タクシーは油虫みたいにロータリーで睦む
 けっきょく選択肢はどこにもない
 あるいは恋人たちとともにして
 アスパラガスにしがみつく

 幸運、それは天使の唾
 大勢のひとびとが
 偶然と必然を取りちがえ
 真っ青なソフトの鍔に手を手をかけてる

 おはよう
 おれの悪友たち、そして悪運たち
 名づけられたもの
 名づけ得なかったもののためにメッサーシュミットに乗り込んで
 銀色の類人猿を観賞する
 おそらくおれがしてやれるのはもっと最悪なやり方で
 きみの善良さ、きみの美しさを讚えること
 胸いっぱい

 

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旅の写真帖:新潟

9/18

 

 青森から東京へもどる。そこでまたも中野の裏庭文庫氏の室で泊めてもらった。かれと合流したとき、しこたまに酔っててわたしはふらふらだった。からだはあちこち痛んでるし、痛み止めは暑さで溶けてた。

 新宿だかどっかの公園で寝てるとき、電話があった。ちんすこうりな氏からだった。なにを喋ったのかはおぼえてない。半分眠ったまま応えた。そこへ裏庭文庫氏。「なにやってるんですか?」といわれてしまう。けっきょく一緒に喫茶店と銭湯へいったあと、かれの室に泊めてもらった。わたしは疲れ切ってた。ひどい腓返りを起しながら、中野からふたたび上野へ。そこから新潟は直江津を目指す。夕方まえに着くも美佐島へいく電車をいっぽん乗り過ごしてしまう。

 

 

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 この旅の目的はそもそもギルドハウス十日町へいくためだった。移住の下見をするつもりできた。もはや神戸の都市生活に辟易していた。気分を落ち着けて暮せる拠点が必要だった。 noteにおける「ベーシックインカムのある “ご近所さん” を、いっしょに作りませんか?」という投稿だった。わたしはすぐにメールを送り、現地にいくことにした。

note.mu

 

 

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 いわゆる限界集落というやつなのか、ひとはほとんどいない。ギルドハウスの住人にはわたしが会ったうちで、12人ぐらい。あとは出稼ぎにいってると聞く。 

 

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 とりあえず、6日間滞在することにした。ほんとうに移住するにはアパートの荷物をどうするかや、仕事や創作をどうやってやつかが大きなネックになるのがあきらかだった。引越しの費用だけで数万はかかる。そこへ衣服や免許、ラップトップやなんかが圧し掛かる。さて、どうしたものか。ハウスの本棚にあった手塚治虫の「アドルフに告ぐ」を読み、考える。やはりしばらくはふたたび神戸で働くしかないのか。

 

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 夕餉をみなでつくったり、バーベーキューをしたりして6日間を過ごした。26日の夜、直江津駅から大阪梅田へ。カーテン厳守の、息苦しいバスに乗って帰路に就いた。

 

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新版 貧困旅行記(新潮文庫)

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アドルフに告ぐ 1

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アドルフに告ぐ(1) (手塚治虫文庫全集)

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旅の写真帖:青森後篇

9/18

 

 朝、ホテルをでる。六ヶ所村を経由して恐山まで連れていってもらう。わたしの格安スマートフォンが圏外なる。入山料を払ってもらい、ふたりで入る。台風が来たあとだというのに、駐車場には観光客たちの車があった。

 

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 激しいかぜでまっすぐに歩けない。

 

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 夥しいほどの風車がわたしを迎えてくれた。

 

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 湖水がかぜに煽られてむかって来る。

 

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 「以前はもっと湯気がでていた」という。

 

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 水子の慰霊碑。

 

 昼になって青森駅までいく。ここでお別れだ。次にいくときは列車にしようなどとおもいながら夜のバスを待つ。ふたたび東京だ。

 

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 サヨナラ、アオモリ、ハナイチモンメ。

 

 

恐山―死者のいる場所―(新潮新書)

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旅の写真帖:青森前篇

9/16

 

 

 

 朝、上野から青森へ。着いたときに夜の8時だった。まっくらななか、月を見る。手のひらにぢっと汗を掻いてた。

  

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 夜明けまでを市内唯一のネットカフェで過ごす。旅草も乏しいなか、朝の町をうろついた。駅前の公園ではひとり旅の男が寝袋で寝ていた。こちらはジャケットしかなく、寒くてしかたなかった。

 

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 朝9時、佐々木英明さんと落ち合う。かれの車にゆられて三沢まで。2時間ほどかけてむかう。帆立が土地の名産らしく、いたるところに幟や看板が立ってる。

 

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 寺山修司記念館。ほとんど写真を撮らなかったのが口惜しい。館内を見、佐々木館長とともに昼餉、そして温泉、そのあと三沢市内のホテルに一泊。たびたび奢ってもらい、なんといったいいのか、わからないぐらいよくしてもらう。

 

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 記念館をでて温泉へむかう途中のこと。市街劇の出演者が稽古で泊まっていたという温泉旅館に寄った。「歴史のあるものなんかここにはない」と佐々木さんはつぶやくようにいった。池も滝も建物もすべてあぶく景気で、東京の会社に造られたものだといった。車を駐めてかれは降りた。渋沢栄一を祀った神社と移築された邸宅があった。

 「気狂いじみてる」と佐々木さんはいった。

 「木も一緒に移したみたい。──でもここにあるといんちきという感じがする」

 車をだして旅館からでると、駅が見えた。そして古い線路が朽ちたままになっているのにも。十和田駅だった。

 「あそこに製材所があって小さいころ、寺山さんの遊び場だったんだ」

 「あの 駅、もうじき毀されるらしいですね」

 「うん、再開発でなんでもなくなっちゃうんだ。あそこは蕎麦が美味しくてひとがよく来るんだけど」

 ガソリンスタンドで給油を済ませ、温泉へ。その道すがら、寺山修司が小学生のころ、かくれんぼをしたという神社や墓場、古間木小学校の跡地などを案内してもらった。かつて寺山母子が棲んでいた場所や、寺山食堂の跡地にも。寺山修司がどんないじめを受けていたかや、かれの母親がどうして九州にいってしまったかを問わず語りのように佐々木さんが話してくれる。小雨の降りはじめた三沢はずいぶんと淋しい顔をしていた。

 三沢のアメリカ村を通り過ぎる。東京の会社による再開発のなれの果てを見る。そしてプリンセス・ホテルにチェック・イン。わたしはずうずうしくも泊まらせてもらった。夜、二軒の呑み屋を佐々木さんとまわった。まずはバラ焼きを喰い、麦酒を呑んだ。つぎに焼き鳥屋へ。テレビでは皇室特集がやっていた。

 最後に全国チェーンの居酒屋で呑んだ。話は詩や文学についてのことが多くでた。わたしはべらべらと酔ってしゃべりすぎてしまった。そういった話題については黙っていたほうが幸福だというのに。好きな作家や、影響を受けた作品、寺山修司作品に触れたきっかけなんかを話した。

 「中田くんは、だれにむけて書いてるの?」

 「それは、読者としかいいようがないです」

 「それじゃあ、だめだよ。詩というものはまずぼくを書いて、それからきみを書かなきゃ。読者じゃだめだよ、詩は二人称で書くんだよ。三人称であってはいけないんだ 」

  わたしは連日の飲酒と移動のせいか、だいぶ参っていた。おもったよりも酒に打たれてしまい、なにをどう話せばいいのかわからなくなる。佐々木さんは森忠明との出会いや印象についても語った。ハイティーン時代の作品を衝撃だったといい、はじめて逢ったときのことも精しく話してくれた。

 「ぼくからすれば森さんは詩人じゃなくて作家だよ。森さんはちゃんと世間と渡り合ってる。でも詩人っていうのは逃げてしま うんだ。ぼくもちゃんと渡り合わずに逃げてしまった。詩人は成熟を拒絶するところがある。ひとはいつか成熟しなくちゃなら
ないけど。寺山さんもそうだったし、ぼくもそうだし。谷川俊太郎さんもそうかも知れない。森さんの弟子だったら、小説とか童話とか散文を書いたほうがいいよ」

 「最近、詩が書けないんです」とわたしはいった。「短ければ短歌や俳句になるし、長いものは散文になっていしまいます」 

 「詩で読んでいた中田くんのイメー ジと実際会う中田くんとがあまりちがってて驚いた。もちろんいい意味で。もっと詩にあるような攻撃的なひとかとおもった」

 ホテルへの帰り道、佐々木さんはいった。「ぼくや森さんがあなたを引っぱっていくことはできない。ぼくはもう70の老人だし、こんな年寄りに期待するようじゃだめだですよ」まるで慢心を見透かされたようで、わたしは頷きながら「このままではいけない」とおもい、ホテル・プリンスで台風の夜を過ごした。

 

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寺山修司全歌集 (講談社学術文庫)

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ココア共和国vol.20

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方言詩集まるめろ

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