みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

want out

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 けっきょく放りだしてしまった、
 借りてきた本のすべてを
 おれという痴聖のなかにあった知性はすべて、
 赦されず、癒やされず、どっかへいってしまって、
 パークサイド・モーテルのいかがわしいマネキンたちと一緒になって、
 灯りのなかに突っ立ってるかも知れない、けれでも、
 おれは買った坐椅子もほっといて、
 蒲団で眠ってしまう
 わるい眠り
 わるい夢たち
 颱風が去って、空気がしんみりしてきた
 冷たいかぜのなかで炭酸水を買いにいくとき
 おれはずっと過古と現実のはざまでゆれ、
 ゆれながら、きのうの会話を懐いだす

 ジョンソン・フレドリックという男がおれに託けた
 あなたに会えるかと、
 あるいはわたしが日本語を完璧に理解することをあなたは望むかと
 おれは答えた、
 you can see me, if you visit.と
 それからこうもいった、 
 I'm still only can simple English.
 So I'm glad if you understand simple Japanese. と。
 ほんとうはたやすい英語さえ、おれにはわからないというのに
 かれはなぜおれと対話しようとしてるのか、まるでわからない
 詐欺の類いか、はたまたおれを女とでもおもってるのか
 禿げあがった中年男が画像のなかで微笑む

 緑色の男が死んだ
 夏の光りのなかで死んだ
 秋は透きとおって、なにもかもがわからなくなる
 こういうとき、シオランならどうおもう?
 いいや、かれは詩なんかきらいなはずだ
 男は放射状にちらばり、やがて枯れ色となり、
 腐敗して土に混ざる
 こればっかりは仕方がない
 おれはjet johnsonを聴く
 すでに解散した、
 ノルウェーのバンド、
 「death song」のシングル盤を
 長くつづくためらいが本のページを重くする、
 そしてまたおれはなにかを放りだすことばかり考えてる。

 


jet johnson / death song

きみたちは、あどけない顔で、

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   *

 今月は、あと¥23,000しかない。というのも見栄を張って歌集を50部も刷ってしまったからだ。短歌なんざ、売れるわけがない。しかも価格設定は¥2500と来る。いまの世にそんな酔狂なものに銭をやれる人間などいない。けっきょく歌集のほとんどは歌誌にむりくり寄贈するしかなくなってしまった。噫。
 電子書籍版も当然値段を下げた。いままでに出した詩集と一緒に千円未満に追いやった。けっきょくできるのはそれだけのことでしかない。おれはしばらくオートミールと、食パンと蜆汁で生活しなくちゃならない。そして眠ってるほか、やれそうなことはないみたいだ。あれ?──いままでの希望はどこにいってしまったんだ?──おれはこんなところでなにをやってる?──情けないことに公共料金もネット代も払えない。すべては来月だ。噫。

   *
 
 知人が映画「ジョーカー」を薦める。かれ曰く《完璧に無敵の人の内容でした。こういう社会問題は世界共通と思いつつ、それを優れた活劇映画として仕上げてくるアメリカは流石でした》。どうにも、その"無敵の人"という表現が気に喰わない。けっきょくそれはユーモアを解さず、自己分析ができず、自己変革に敗北し、やけっぱちに暴走したものへの蔑みじゃないのか。そしてそんなこととはおかまいなしに変革を免れつづける社会=われわれが優位だとする宣言ではないのかとおもう。もちろん、こんな戯れごとは思考実験の域をでてない。どこぞの批評では主人公の暴走を肯定的に捉えてるとして批判されてた。
 まあ、そんなことはおいといて、まずは映画を観なきゃ話にはならない。出発点に立てない。でも、金がない。子供のころよろしく、ラム・レーズンのアイスでも嘗めていたい気分だった。もちろん、ラムはアルコールだ。おれはシアナマイドを服用してる。この事実を服膺せねばいかん。噫。

   *

 けっきょくおれは文藝も音楽もやめて絵にもどることになるだろう。売れるものをつくらなきゃならない。なんとか都合をつけてデッサン教室にでも通い、基礎を学ぶしかない。そいつで巧くいったなら、余技に曲でもつくればいい。もちろん音楽なんかモノにならない。詩歌はしばらく手慰みでいい。小説はあきらめてしまった。そんな余裕はない。とにかく、かわいい少女でも書けばいいいいんだろ? 藝術ぶった代物じゃウケないのはわかってる。とにかく理想のエロスを描くしかない。噫。

   *

 きょうもいつもとおなじ。朝餉に鶏胸肉と野菜の蒸し焼き、昼餉にグリルチキンとパンと野菜ジュース、そして夕餉にオートミールカップ・スープ混ぜ合わせ。けれど、これだってあんまり安くはない。けっきょくは食パンと蜆汁で我慢ということになるだろう。
 おれは眠る、おれは眠る、おれは眠れる。──というわけで、いつか書きかけたままの「ナルシス」という詩の断片を反芻しながら、敷きっぱなしの蒲団のなかに潜り込み、夢を見るとしよう。だからきみたちは、あどけない顔で、一笑に付してくれ。噫。

  他者たちから定義づけされたおれという存在についてのノート
  自身の理想と現実についてのノート
  その乖離についてのノート
  その容貌についてのノート
  黴の生えたノート
  ¥380のノート
  灰色のノート

   *

 

mitzho84.hatenablog.com

mitzho84.hatenablog.commitzho84.hatenablog.com

 

サービスエリアにて発見

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 火柱を跨ぐ少女や秋白し

 

 夜ぴって書き終わらないト書きある

 

 訓戒受けまっすぐに蛙喰う

 

 ぬばたまの夢よ凾にてわれひとり

 

 支那人の店員われを着服す

 

 けもの草質草旅草草枕

 

 パセリ散り屍肉のうえを湯気あがる

 

 花々を弔いながら楡死せり

 

 暗がりの読経の声と夕餉して

 

 草色のルード・ボーイや蠅いずこ

 

 夜行バス一台ばかりおなじ顔

 

 友引の鍵穴見つむ少年立つ

 

 賽をふるたが一生の運のため

 

 別人のふりして通う鮨屋かな

 

 ひと攫い飛ぶ夢を見ん冬至なる

 

 房ごともなきまま老ゆる血統書付

 

 探偵のひとりの頭蓋さ迷いぬ

 

 ファルファッレ啄むなかで死亡記事

 

 足長き女ひとりや栗拾う

 

 穴深き秋から冬へ掘り進む

 

 墓穴も秋から冬へ掘り進む

 

 月光のドライヴひとり行方不明

 

 遠き夏誕生石も砕けたり

 

 流し雛流し忘れて暮るるまま

 

 百凡のロックンロールやがて消ゆ

 

 黄葉落ちふと憐愍の薄化粧

 

 くちびるの肉厚ぶりに茜差す

 

 汽笛鳴る一生のうち一度だけ

 

 忌中告ぐ葉書の幾多竈に投げ

 

 書割りを歩くごとくの散歩する

 

 中古るの産着の襞によぎる死は

 

 喃語とてもはや虚しく犬擲てり

 

 われ統ぶる十一月の晩の虫

 

 私道にて通行禁止河へ投げ

 

 蟹歩く月面だれの墓標かな

 

 秋月のおもかげ午の空に見る

 

 潮の音へ至る道すがら自死の犬

 

 浦島のように佇む一年草

 

 古井戸にするりと落ちる小銭入れ

 

 乳足らずの母の貧しき時計売る

 

 ぶらさがるひとの恩義やしだれ草

 

 多年草実りなきまま燃やさるる

 

 柿実り嬰児殺しの記事が飛ぶ

 

 東京や滾滾として刹那ゆく

 

 月という女の顔や宇宙線

 

 忘るるという字面はもの悲し

 

 われひとり罷り越したる御地の雪

 

 魚石の断面光る夜の宿

 

 ウォーホルの複写のかげの万華鏡

 

 喪失ということを識る十七音

 

 みずからの翳まっすぐに霜払う

 

 酒場町宿町充る枯るる梨

 

 落馬して騎手遠ざかるダート、雨

 

 連れあいもなくて小雨ぞ降りかかる

 

 凡夫たるたとえば冷ゆる鰊蕎麦

 

 犀を飼うわが幻想の旅枕

 

 星暦を数えて眠る少年の旅

 

 ふり下ろす手斧の柄の木の雫

 

 秋晴れの尋ね人欄立ちどまる

 

 ひとりいてひねもす鍵を眺めやる

 

 子供靴サービスエリアにて発見

 

   *

 

 内田美紗に影響されて書いた。

鉄砲百合の射程距離

鉄砲百合の射程距離

 

 

歌集「星蝕詠嘆集/Eclipse arioso」販売開始

中田満帆歌集「星蝕詠嘆集」、販売開始しました。
よろしくお願い致します。
ご入金確認後発送します。
御購読ください。

連絡先:078-200-6874 / mitzho84@gmail.com
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hang off

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 ためらいのなかでぼくはやっと鍵盤を叩く
 そしてぼくを見限ったかの女を
 さらにぼくが見限る
 なんにせよ、だれかの下した判断ならばどうしようもないこと
 できることはなにもない、他人同士のできごとだ
 相互フォローが終わって、
 ぼくはかぼやく、
 あんな女なんかって
 でも、かの女は売れ筋のインディー作家
 そしてぼくは売れないどころか、識られもしない紙切れだ
 ぼくは秋草のなかの、もっとも暗いところへいった
 アパートの駐車場で少年がバットの素振りを繰り返してる
 なにが名声か、
 なにが文体だ、
 まったくもってどいつもこいつもきれいごとを抜かしやがって!
 けっきょく物語はぼくのなかには現れて来ない夜半すぎ
 たったいま安全地帯の違法駐車から、
 黒い男が降りて来て、
 ぼくに道を尋ね、
 チップを渡す
 なんだか悲しいよな
 仮にここまで行数を増やしたことによってなにかが喪われるのなら、
 まずまさっきにかの女の妬心、そして現実と理想との乖離をどっか遠くへやっておくれよ