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垂乳根の母などおらず贋金のうらの指紋を眺むる夜よ
童貞の夏をおもいしひとときが飛行機雲となる快晴
水盥茎を濡らして終わりゆく五月の空をしばらく見つむ
父死なば終わるのかわが業も テーブルに果実転がる
陽当たりにトマト罐ひとついまだ未来を信じる切なさ
かげさえも遠ざかるなり週末の女のひとり翅をふるわす
やわらかき胸してきみを訪ねゆく河面に夕陽落ちたる頃に
ときとしてものみな遠くかすむかなみどりのなかの紫陽花なども
水走る犬の眸にさかる陽も物狂いするけものの躍動
約束の土地はあらずや夢の街だれも知らない町を求める
この夜の上流だれもいない室いつかの唄をまだくりかえす
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