みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

radio days

 

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 花の懶惰が咲き乱れる そんなに美しくていいのかと呼びかける 回転草とともに去る一匹の禽獣が薄明るいほどろのなかで、輝きながら消滅する 樹液を通した世界があまりにも脆く、突き刺さる森はあるとき、スローモーションで顔を変える 一匙の塩と、花びらの重力がやがて等しくなる頃、竈の番人が星図を仕上げ、まっさきに門をでるのは月光の囁きだ おそらく主人の亡くなった家で、窓を寂しがるのは青い肺の心理 だからといってふり返りはしない 熱い篝火のまえで不在のものらに誓い、たったひとりで立ち向かう未来を妄想している

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 アフリカの祖先が平行運動をしくじる 淡い地平に投影された空域が澱み、ぶ厚い憂いとなって、降りかかっている なぐさめなんていらねえよ 先祖に愛を 愛を 愛をと願い、それでも憎しみと一体となりながら点呼するのをやめない 冷たい広場で殻になったひとびとが砂地に充たされた場所で、草のように呼吸する恋しさが、サイドボードから落ち、砕けながら、きみを求めている

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 一人称を暗殺するために推理小説を書く夜もあった 泣きながら眠る子供と、流体力学を学び、英雄になれない痛みを亡霊と分かちあう 仮面が外れなくなったかれは自動車事故に依存する バラードの悪夢と、スタークの殺戮とが大きな犠牲のうえで踊っている 果たして月は模造品だった 慈しみのない手と手が握りあい、潰しあう時空を仮想している 醒めない夢のなかで、愛を 愛を 愛をと歌っている 

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