みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

詩劇

 

 

 与えられた奇蹟のなかで互いの不出来を突き合う みながみな見えない軛に支えられて生きるのは テレビジョンの磔刑、そしてインターネットの拷問を愛するため 透明性のないガス・スタンドで情報を供給する従業員たちが、いっせいに制服を脱ぎ棄てる 打ちのめされた都市生活 人称を奪うこともできない左手で 片手だけで祈ることの寂しさ 明滅するルーターの光り 十三秒の間隔でつづく他者の死と蘇り あるいは無知によって癒やされる大多数のひとびと だれもいないはずの室に灯りが見える だれもいなくなったところで詩劇が始められる 一匹の鼡と、一羽の文鳥と、一本のストラトキャスターが呻りをあげ、かれを召喚するとき、かれは笑みを浮かべ、おそらくはわれわれを奇蹟のなかで、すっかり蚕食してしまおうと企んでいるのだ。