みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

110フィルム

 

 すばらしい被写界深度で 110フィルムが映しだすのは少年時代のぼく そのぼくがカメラを持ってさまよう もちろん、かの女を求めて ぼくが友衣子に抱くおもいは尖ってて痛いんだ 遠く聞える汽車の汽笛 路地裏を姦通する大陸鉄道の軌道が、そして血が、なみだのようにふくれあがっては消える そしてわずかな試みだけがぼくを誘ってやまない だれも赦せないことがぼくの存在を証明してくれていた でもそれは終わった ぼくはもはや存在しない ぼくはここにはいない みずからが身につけた鎧に傷つけられるたび、ぼくはおもった もうこれで終わりにしようと カメラが手から落ち、みじかい映画のようにフレーム・アウトしていくなかで、もはや焦がれるひともなく、ただただ浅ましい自我の断片でしかないぼくが映写機のなかで回転をくり返していたんだよ。

 

Lomography Color Tiger 110

Lomography Color Tiger 110

  • メディア: エレクトロニクス